夕焼け





何を考えているのか…


休日の午後。
部屋の中には外の陽光が降り注いで、暖房をつけなくても良い程の温度になっていた。
まったりとした空気が、どちらかと言えば眠たくなるような、そんな雰囲気を纏っている。
男同士だから、そんなに会話はない。
それが更に拍車をかけていた。
俺は目の前にノートパソコンを開き、持ち帰っていた仕事の資料をダイニングの椅子に座って目を通している。

随分と勝手がわかってきたのか、コーヒーを入れたり、本棚から本を持ってきて読んだり、
テレビをつけては消してをしていた中村が動きを止めた。

その気配を感じて資料から目線をはずし、ノートパソコンの向こうに見える中村の後頭部に目を向けた。

全体的に色素が薄い。肌も白く、髪も少し茶色がかっている。
部屋に入る光の加減で、その色がほとんど茶色に見えるくらいに。

少し前かがみになり、カチッと音がして、ふうと白い煙が部屋の中に吐き出されたことでタバコを吸ったことを知る。

何を考えているのか、漫画の噴出しのように気持ちが覗ければ面白いのに…

また、そんなバカな考えが浮かんで来た。
消し去ろうと思い、資料に目を戻し、明日の会議の資料の作成に取り掛かった。



資料を作り終えたときには、日は随分と傾き、赤味を帯びた光が部屋に入り込む。
肌寒さすら感じ始めていた。

ソファに目を向けると、中村の姿が見えない。

「英太」

名前を呼んでみたが返事がない。

座っていた椅子から腰を上げ、そっと近寄り、背もたれの上から覗いて見ると、中村は横になり寝息を立てていた。

茶色がかった髪にそっと触れる。

そこで瞼がぴくぴくと動き、細く目を開けた。

「…終わったの?」

寝起き独特の掠れた声で小さく問われる。

「ああ」

そう答えると目元をこすりながら、起き上がる。
起き上がって出来たスペースに腰を下ろせば、

「水」

そう言われた。散々好き勝手やっていたのだから自分で行け。
そう含んだ目で中村を見れば、

「…いいじゃん。それくらいしてくれたって、家主なんだし…」

言われた言葉に、若干カチンと来る。年下だからだろうか、生意気にさえ思う。
だが、続いて聞いた言葉に何も言えなくなった。

「……忙しいのはわかるよ。でも、放置しすぎだから…。少しは構ってよ……」

台詞自体は強気なものだが、徐々に尻すぼみになる言葉に、素直に水を取りに行く。
言った後の中村の顔が赤かったのは、夕焼けのせいだけじゃない、そう信じたい。




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