溺れていく





間接照明だけの暗い部屋に、出したくもない自分の声とベッドの軋む音が響く
与えられる快感を捉え、支配されて行く行為

高元の背中に必死にしがみ付き
爪を立て、肩に歯を立て、体を重ねるごとに、肌に傷をつけていく

慣れることのない圧迫感を霧散させるための行為とは言え、
好意を抱く相手につけた傷は、後でひどく後悔をする。
だから手を離し、枕を強く握り込んだ。

煽られ、抉るような動物的な動きの中に潜む快感を捉えてしまえば、
そんなことすら気遣うことが出来なくなるのは、
揺さぶられる体が、放出に向かって熱を上げていくことに集中するから

それでも、昂ぶったものを握りこまれ、2つの快感を与える高元に、枕から手を離し、腕を伸ばした。
その手を掴み、歯並びの良い歯で指を齧られる。痛いはずのその行為でさえ、
快感に変えられ、次に背中へと導かれる。

それと同時に唇をふさがれ、更に深まる繋がりと速度を上げる揺れに、
限界が近づいていることを知る。

唇を離した高元の頭が自分の頭の横にくる
声を抑えることが出来ないくらいの快感に溺れながら、
朦朧とした意識の中で、掠れた声から発せられた言葉に、
一瞬、意識が手繰り寄せられる

「英太」

たった3文字のその言葉のなかに、どんな感情を含んでいるのかなんて、わかりはしないが、
それでもその声が発した自分の名前に、確かに求められていることだけは確信した。


求めるから求められるのか、求められるから求めるのか
どっちが先で、どっちが後なのか

どんどん激しくなっていく抽挿に、溺れていく。

名前を呼ばれる度に、深く高元の背中に爪を立てる。
爪を立てれば、質量を増し、深く深くと高元が求める。

「も、…イク…」

そう言った俺の口を高元が塞ぐ。
言った通りに白濁を解き放てば、数秒遅れて、高元も達したことを体の奥で感じた。

唇を離してはあはあと肩で息をしながら、俺の中から引き抜き、上半身を俺の上に倒した高元の背中に、
今度は優しく腕を回した。

「英太…」

行為の最中とは違う響きを含んだそれを、聞きながら、独特のだるさを押しやり、
子供を扱うように、汗と滲んだ血液を纏った背中を撫でる。
労わるように。

高元に溺れていく。
どんどん欲しくて堪らなくなる。

行為自体にというよりも、高元自身に

欲しくて欲しくて堪らないから、そうすることでしか求める術を知らないから、
高元の背中にあるその手が、
意味を含んで再び動き始めるのを止めることなんて出来ないんだ…




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