4度目





初めて会ったのは道端だった。
二度目に会ったのは、取引先の応接室。
三度目に会ったのは、昨日で、
四度目に会ったのは――






ひどく心地が良かった。

頭はガンガンと鐘が鳴り響き、喉はガラガラといがらっぽかったけど、
それ以上に、心地良かった。
だから目を覚ますのがすごく嫌で、肌触りの良い枕に顔を更にうずめた。

横にあったはずの温源がなくなって、ごそごそと服を着込む音がする。
決して女性のように柔らかくはないが、高すぎないその温度が心地良かった。
頭は起きていたけど、目を開くことはしなかった。
正直、気恥ずかしいと思う気持ちの方が勝っていて、どう顔を合わせて良いものか…

ドアの開く気配がして、高元が部屋を出て行ったのがわかった。

そこで、漸く目を開けて腕をベッドに押し当てて上半身を起こす。
白いカーテンに白いシーツ。
朝と言うには遅く、昼と言うには早い時間の、
光が部屋に入ってくる。

喉がガラガラなのは、酒のせいだけじゃないだろう。

どうしようか、と思っていると、また部屋に近づいてくる足音。

急いで、また枕に顔をうずめる。
ドアの開く音がして近づいてきた足音は、ベッドの脇で止まり、コトンとサイドテーブルに何かを置く。
そっと、髪を撫でられる。

後悔していないのだろうか…

俺は、後悔などしていない…ただ、先が見えないだけ。
それは、男女の恋愛と一緒だ。
男と女だって、先が見えないことに変わりは無い。
ただ、決定的に違うのは、法律上の終着点がないという事だろう…

何度も何度も触れる大きな手。

 縋って
 繋げて
 噛んで
 包んで

昨日の事を思い出して、耳が赤くなるのを感じた。
高元に起きていると気づかれるだろうか…

そう思っていると、気配が近づき、一度触れて遠のく。

頭にキスをされたと気づいたのは発せられた低く響きの良い声が、
あまりにも近くから聞こえたから

「水、置いてるから…」


気づいていたのか…

そうなれば、気まずい空気を早く払拭したくて、遠のく高元の気配を追った。

手を伸ばして、捕まえたのは、高元の腕で、硬く筋肉質な腕は、俺よりも太かった。

「起きてたのか?」

「……気づいてたくせに」

枕に顔を押し付けたまま発した声はひどく掠れていた。

「水、飲め」

そう言って高元がベッドに腰を下ろす。少し体が傾く。俺の手をいじりながら、

「飲ましてやろうか?」

明らかに何かの意味を含んだ声音に、目だけを向けて高元を見る。

「後悔なんてしてないよ……」

そう言った高元の顔は真剣で、耳に届いたその言葉は、ひどく心地の良い響き。

後悔なんてしていない。

ただ、先が見えないだけ。





――――四度目に会ったのは、ひどく心地の良い、朝だった。





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