En échange de la sensation que j'ai accepté
〜認めた気持ちと引き換えに〜





完全にドアの閉まった玄関は暗闇に包まれた。

腕の中の中村は、まったく動く気配がない。
あっけに取られているのかもしれない。
酔った頭では状況がつかめないのかも知れない。

冷静になろう、と一度体を放して見れば、中村の膝がグニャリと崩れる。
慌ててもう一度抱きしめた。

タクシーの中から焦り始めた思考で勢いだけでここまでしてしまったが、
これからいったいどうしようと思い、焦りが全身を駆け巡る。
それと同時に、心臓も激しく血液を送り出した。

見えない敵は中村なのか、自分なのかも、もう既にわからない。
往生際が悪いと葛藤する頭の中で、諦めろと言った自分の声が聞こえる。

「認めてしまえ…」

自分自身に言い聞かせた言葉が小さく小さく真っ暗な玄関にこぼれた。
それとほぼ同時に、腕の中で動かなかった中村が、急に俺の背中に腕を回し、強くしがみついてきた。

中村の腕に力が入れば入るほど、体に響くもう1つの心音。
心地よいリズムを刻む心音から徐々に体を放し、俺より少し下にある中村の額に俺の額を引っ付ける。
アルコールの匂いに誘われるように中村の唇をおれの唇が掠める。
離した俺の唇を中村の唇が追いかけてきた。
離れる度に追いかけていた唇が隙間を開けたところで、抑えが効かなくなった。

喉の奥までも貪りつくす。
口の奥から欲しいと手を伸ばすかのように舌を動かし、
それに絡まる中村の舌の動きが、理性も何もかもを吹き飛ばすような扇情的なものへと変化する。

耐えられなくなり、体を放してみれば、案の定、中村は自分自身を支えられない。
面倒だと、担ぎ上げた体は、やはり女のように柔らかくも無ければ、軽くも無い。
乱暴にベッドに仰向けに寝かし、ネクタイに手を掛ければ、中村も俺のネクタイに手掛けた。
キスをしながら次々と服を奪い合い、お互いがお互いを求めて、体を重ねる。

認めてしまえばひどくあっさりと受け入れられた。
男同士のそれは、女を抱くのとは訳が違い、もっと動物的なものだった。
それでも夢中で求めた俺を、夢中で求め返す中村の腕が、俺の背中に無数の傷を作り出す。
その痛みさえも行為自体を煽るものに変わっていた。


認めた気持ちと引き換えに得たものは、彼が欲しいと思い、手に入れたと思う満足感だった。


お互いに放った熱に肩を弾ませ、体を放した。
中村の横に体を沈ませれば、眠そうに目を閉じ、それでも抵抗するように瞼がヒクヒクと動く様を見ていた。


「初雪を見ると結ばれるって、男同士じゃ有り得ない、か…」


そう言ったのは自分である。

何が有り得ない、だ。


夢中で求め、夢中で行為をした自分に自嘲すら浮かべた。

やっと手に入れたプレゼントは、サンタがくれた物かどうかはわからない。

でも、隣のこの存在を今はなくしたくないと強く思い、頭を撫でた俺の手に、
眠りに落ちそうな中村の手がそっと重なった…


〜END〜





最後まで読んでいただきありがとうございました!
箱を開けば、夢中なのはどちらかと言うと、高元の方…(笑)

では、良いお年を!

08/12/27




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