むしょうに





どうしようもなく抑えられない衝動がある。

昼間っから考えるような内容じゃなかった。
周りの人たちに俺の思考がわかるわけなんてないのに、何となく人と目を合わせることが出来なかった。
ただただ体が欲する欲望にのみ、忠実に思考が働いた。
それだけだった。

仕事が終わるや否や、会社を飛び出し、駆け足で駅に向かう。
発車ギリギリに乗り込んだ電車が、動き出しても体が落ち着かず、
『もっと早く!』と心の中で叫んでいた。
駅に着き、人の間を縫うようにしてマンションに向かう。
下から見上げた部屋に、電気が灯っていることに安堵して、エレベータの中ですら駆け足をしそうな勢いだった。
チン!と音がして開いた扉から、鉄砲弾のように飛び出して、
鍵を取り出してドアを開け、革靴を蹴るようにして脱ぎ捨てて、一直線にリビングに向かう。

「ただいまー!!!」

ドアを開け駆け寄った気配に高元が目を見開いてこちらを見る。

「おっ……かえ…グエッ!」

おかえりの声すら待てなくて、勢いのままソファの背もたれを隔てて抱きついた。

「…え…いた…くるしっ」

少し腕を緩めて、肩に額を当て、高元の耳元で囁いた。

「なぁ高元………しよ」

「は?」

帰って早々に言う言葉じゃないことはわかっていた。
だからなのか……高元の体が一瞬強張ったのが、額から伝わる。

「…だって俺、仕事中もずっとやりたくてやりたくてしかたなかったんだ……」

「……」

「な?……しよう」

「……嫌だって言ったら?」

「えー!!!しようよ!」

「嫌だ。俺はそんな気分じゃない」

「何だよ!ここんとこ忙しいからって、ずっと俺のこと構ってくれなかっただろ?」

「それは悪かったと思ってる。でも、嫌だ」

「いいじゃん!ちょっとくらい付き合ってくれたって」

「……1人ですればいいだろ?俺がいないときは、1人でしてたんだから…」

「…そりゃあ…そうだけど……」

「見ててやるから」

何となく納得しない気持ちを抑えつつ、それでも俺は着ていたコートとスーツの上着を脱いだ。





「うっ……あっ……ああっ」

「……」

「ちょっ……まっ…て……おわっ!」

「……英太」

「なに?……今、いいとこ……なん、だけど」

「そこじゃなくて、そっちだろ?」

「え?」

「違う」

「どこ?」

「そこ」

「あっ!あぁぁぁぁぁぁ……」





首を仰け反らせて出た声が部屋の中に木霊する……

「死んじゃったじゃないか……」

「俺のせいじゃないだろ?」

「……そうだけど」

「だいたい、いい歳してゲームって……」

「面白いよ。面白いものに年齢は関係ない」

「そうか……だったらもっと面白いことしないか?」

「え?何?もっと面白いことって?」

「したい?」

「うん!」

「じゃあ、こっち来いよ」

「う、ん」

ごそごそ……

「ちょっ!あっ!……まっ、て、たか、もとぉぉぉ……」





はい!お約束の展開でした(笑)
真面目な話ばかりを考えていると、こういう話が妙に書きたくなるようです^^
ごめんなさ〜い!





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