何度でも 起きたときに感じていた違和感が、薄らぐのにそう時間はかからなかった。 けたたましい目覚ましの音ではなく、低い響きが発する自分の名前で意識が浮上する。 見慣れないと思っていた天井が、見慣れたものになる。 腰に回っていた腕が、ぎゅっと抱きしめるように引き寄せるから、 硬い胸板に顔を押し付けた。 「英太」 呼ばれる響きは、寝起き特有のかすれが混じる。 意識が浮上した声なのに、その声に満足した俺の脳が、また眠りの波の中に飲み込まれそうになる。 「英太」 ぎゅっと抱きしめていた腕が離れ、軽い力で頭を押しのける。 「起きろ」 「…まだ…」 無意識に離された分だけ、元に戻ろうとする。 「…遅刻するぞ」 「ぃやだ…」 「じゃあ、起きろ」 言葉とは反対に、背中に回った腕が、ぽんぽんと包むようにリズムを打つ。 「…もうちょっと…」 言った言葉に、額にキスが落とされる。 そんな朝が、これから… 何度でも、いつまでも―――― [*前] | [次#] ≪戻る≫ |