いつか私は彼にかみ砕かれてしまう。
私の彼氏、仁王雅治は大変ご立腹であった。学校内に防犯カメラが仕掛けられているのではと疑いたくなる程彼の浮気チェックは綿密であり、一分の隙も無い。
「昼休み、幸村と話しとった」
「いっ、たぁ…い…」
「放課後、柳と赤也」
「マサ、やめ…っ」
誰も居ない、入って来ない旧部室棟。私の制服を剥ぐなり雅治はがりがりと私に噛み付いてきた。指、肩、鎖骨を鋭い犬歯で貫こうとする。
そう、浮気(といってもそれは雅治から見たもので、私にとって浮気のつもりは微塵も無い)をする度に彼は私を噛む。
「…雅治、っ」
「ああ、こないだの痕な、紫色になっとるぜよ」
「やめて…」
「尹月が止めたらな」
止めろと言われても、同じ学校に通って、ましてやマネージャーをしている以上他の男子と接触しないなんて事は不可能である。そんな無茶な、と言い返したところで、はたして雅治は聞く耳を持ってくれるだろうか。
「は…あっ、あ…」
「困ったもんやの」
「…ひ!首は…だめぇ…!」
雅治がゆっくりと私の首の肉くわえる。制服で隠せないここにキスマークどころか、噛み痕が付いているなんてごめんだ。私が嫌がると雅治はいっそうきつく私を抱きしめて抑え込む。
「あ、あ、やだ…って…言ったのにぃ!」
くくく、と雅治が喉で笑う。鈍い痛みの後にゆっくりと雅治が離れ、その顔は満足げな笑みに歪んでいた。
「…されたくなかったらな、頑張りんしゃい」
何を、と聞き返す事は出来なかった。
100622