尹月が旅行に行くらしい。お土産買ってくるからねと言い残し、尹月は昨日オーストラリアに旅立った。今頃コアラと戯れとるんやろか。コアラはらたつ。



「あ、ユウジ、これ尹月の忘れもんやねん。届けたってや」



白石に渡されたのは尹月のジャージ。部室に置き忘れていたらしい。尹月が旅行に行っている事を、俺以外は知らない。家庭の事情と称し家族ぐるみで学校をサボって行っているので、あまり他人に知られては困るらしい。

どないしよ。
このジャージ。



どうしようも無くて俺はとりあえず尹月のジャージを持って帰った。
洗濯しとったらなあかんよなぁ。
自分の部屋に入ると、鞄から尹月のジャージを取り出した。



「…しゃあないよなぁ」



俺のジャージと一緒に詰めていたせいでつんと鼻をつく汗の臭いがやや移ってしまっていたが、確かに尹月の匂いがした。自分の部屋であるにも関わらず俺は部屋に誰も居ないか確認し(たまに兄貴が悪戯しにクロゼットにおる)、尹月のジャージにぎゅっと顔を押し付けた。
やばい、俺変態なんかも。
肺に一杯尹月の匂いを吸い込み、次の息をするのも悩んだ。



「…はー…」



俺かてお年頃やし。なんちゅーか、暫くご無沙汰やったし。むずむずすんねんけど。オカズにしたら尹月に怒られるやろか。不可抗力やもん、しゃあないやんな。
尹月のジャージを小脇に抱えてベッドに 腰掛けた。






「…ユウジ」

「…は、い」

「この…染みは…何ですか…?」

「えーと、俺の息子から出」

「しね」



したら、染み取れんくて怒られた。



100610





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