東京の冬は厳しい、そう聞いてはいたが、芯から凍るような寒さに身震いして歩みを速めた。ガチガチと歯がぶつかる。手の中の頼りないくしゃくしゃの地図を手に、現在地を確認する。
彼女と直接会ったのはもう何ヶ月前だろうか。俺が関西の四天宝寺中、尹月が関東の青学。中学生に遠距離恋愛は厳しく、よくこんなに続いたものだと自分でも思う。親からの仕送りを少しずつ貯めて、こうして漸く東京に会いに来る事が出来たのだ。本当はクリスマスに会いに行きたかったが、クリスマス前には俺も実家に帰らなければいけなかったし、飛行機も取り辛い。尹月が特に何の用事も無いと言っていた今日、サプライズとして会いに来たのだ。
繁華街を歩けば店はクリスマスカラーで染まっている。尹月に少し早いがクリスマスプレゼントでも贈ろうか、とショッピングモールを横切った。広場のような所には大きなクリスマスツリー。その下では幸せそうな恋人達が居る。やっぱりプレゼントはまた後にして、先に尹月に会いに行こうか。そう迷った時、俺はツリーの下に一人の少女を見つけた。もうすぐ日が暮れるというのにその子は一人ツリーの下でツリーを見上げている。俺は走った。

「尹月!」

少女が振り向く。少し前髪が伸びたようだ。尹月は俺の姿を捉え目を円くした。

「千歳君?…どうして?」

「尹月に会いたなったけん、飛行機で。尹月は?今日は用事無かったんやなかと?危うく入れ違うところだったばい」

尹月は相変わらず驚いて、まるで俺を確かめるかのように俺のダウンジャケットを撫でた。

「もうすぐクリスマスじゃない?だから、千歳君に何かないかなって探しに来たの。そしたらツリーが、ね、綺麗でしょ」

尹月に言われて改めてツリーを見る。言われた通りきらびやかで豪華で、綺麗だ。

「けど見てたらなんだか寂しくなっちゃって。今年のプレゼントは千歳君がいいなーとか、考えてて」

尹月が微かに涙ぐむ。

「そしたら千歳君が来て。なんだか、嬉しすぎて泣けてきちゃった」

尹月をそっと抱き寄せる。周りに沢山居るどのカップルにも負けないよう力いっぱい、冷えた体を温め合うように。

「俺もちょうど尹月ん事欲しかったとよ」

氷のように冷たかった顔だが、なぜか目頭だけじわりと熱を持った。



101205

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