ユウジのアドレス帳はびっくりするほどむさい。私や小春ちゃん以外の女の子?の名前がまるで無い。私には好都合だが、それはそれで彼の対人関係が心配だ。藍色のスライド式携帯をユウジに投げ返す。落としたらどないすんねん、と言いながらも危なげなく携帯を受け取った。教室の床は硬いから、本当に落としていたらオダブツだっただろう。

「やって、女の友達なんか作れんし」

「なんで?」

「そんなん、男女の友情が成り立つ訳あらへんやろ。第一、お前がそうや」

そこで私は言葉を詰まらせた。そういえば私とユウジも元々は白石の紹介で、ただの遊び友達だったはずだ。私がユウジを異性として意識してから友達で居られなかった期間もあった。けど、白石や小春ちゃんのおかげでどうにか今の関係に辿り着けている。
私は、それでも男女の友情は存在すると思う。小春ちゃんはともかく、白石や小石川との関係はそれとしか例えようがない。

「俺、女のアドレス入れたないねん。めんどい」

「ふーん…あれ、でも私の時はすんなり…」

「それは…お、お前やったからや!」

「それ、ってさ…一目惚」

「もうええやろ!この話は終いや!」

真っ赤になったユウジは今度は私の携帯を取り上げた。といっても私の携帯はオートロックなのでユウジに操作は出来ない。どうだ、と見ているとユウジは眉をしかめたが、すぐに幾つかのボタンを押してロックを解除した。

「え!なんで?」

「パスワード誕生日にするやつがおるか、アホ」

「ぐ…」

してやったり顔のユウジが携帯をいじり回す。別にやましい事は無いが、友達とのガールズトークなメールを見られるのは流石に避けたい。ユウジから携帯を奪い返すべくユウジに飛び付いたが、私もユウジに勝るチビである。

「お前、なんで謙也のアドレス入ってんねん!小石川、白石まで!」

「え、普通」

「し、信じられへん…」

異性との関係が薄いユウジにとってはそうかもしれないが、私にとっては何もおかしくない。白石や小石川に関してはユウジとの間をもってくれた恩人だし、謙也には部活でのユウジの様子を教えてもらったり、ユウジに関して協力してもらっているだけだ。大事な事なので二度言うがやましい事は無い。

「…浮気か」

「だから違うって」

ユウジは許さん、と呟き、素早く私の携帯を操作した。警告音が鳴り、あっと気付いた時には遅かった。どうにかユウジから携帯を奪い返して見た時には、ユウジや女友達以外のアドレスが消えていた。

「お父さんのアドレスまで!ちょっとユウジ!」

「しらん」

「なんでこんな事すんの!」

「お前が浮気するからや」

「ユウジは私の事、信じてないの?そんなに信用出来ない?私の事本当に好きなの?」

「おっ、お、お前が好きやから心配になるんやろ!あほぉ!」

今度は耳まで赤くして抱きついてきたユウジを怒るなんて私には無理な問題だった。


100826

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