「真田君のその…学ラン姿っていうの?なんていうか…あの…うん…に、似合ってるよ」

尹月が頬を染めながら俺に言うものだから、俺は幸村をはじめとする何人もの男に睨まれる事になってしまった。理不尽窮まりない。事のはじめは俺が体育祭の応援団長に選ばれてしまった事。応援団の衣装が詰め襟(学ラン)であった事。それを被服室で試着している時に尹月がやって来た事。
尹月にそう言われる事が、不快ではなかった。惚れた弱み、俺も相当たるんどる。

「良かったじゃないか真田尹月に褒めてもらえるなんてアハハ馬子にも衣装ってやつだね何真田テンション上がってるの?上がってるよね?調子に乗るなよアッハッハ」

「弦一郎よほど嬉しかったのだろう?顔が赤いぞ」

幸村の怒涛の攻撃、そして蓮二の指摘で他人から見ても俺は浮かれて見えるのだと分かった。つまり尹月にも。それは流石に不様だ。俺は気付くと走り出していた。俺は照れている。なんとたるんだ顔面だ。
それでも俺は尹月が好きだ。



真田が走り去った後、俺は尹月にこっそり尋ねた。部長の俺を差し置いて真田が褒められるなんてどうかしてる。

「ねぇ、尹月、あれ本心?」

「え?そうだけど」

「…妬けるね」

俺の冗談でないその言葉も尹月はけろりとしていた。ここまで鈍いと考えものだな。真田が照れてるのにも気付いてないらしい。尹月が鈍いお陰で俺がアタックするチャンスを得ているんだけど。尹月は俺に悪いと思ったのか、またもじもじと遠慮がちに話し始めた。

「だってあの真田君の学ラン姿、なんていうか…こけしみたいだよね」

「!?」

「…こけし…」

こけし?柳じゃなくて真田が?ああ、真田の髪も几帳面に切り揃えられているからね。それで学ラン、うん、見えなくもない、見えなくも…

「あはははははは!」

「え、私変な事言った?」

「いや、いいよ、うん、いいよ」

「え?え?」

「そのままの君で居て」

この二人は難しいなぁ。

100815
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