「あっ、ねぇあれ可愛いね!」
「ん?ああ、ほんまやな」
ついにやってきました新婚旅行inイギリス。日本と違って気候は良いし、料理は美味しいし、景色も綺麗。何より嬉しいのはユウジと二人っきりで旅行に来られた事。実は私はこれが初めての海外旅行で不安もいっぱいだけど、ユウジがちゃんと下調べしてくれたお陰で何もトラブルは起きていない。
「ほなそろそろレストラン行こか」
「うん」
ウインドウショッピングもそこそこに、私達は一度ホテルに戻りよそ行きの服に着替えて、予約していたレストランに入った。席に着くと、夜景がすごく綺麗。結婚してからデートなんてしなかったから、随分久しぶりに良い雰囲気なのかもしれない。
テーブルの上で揺れるキャンドルのライトがムードを盛り上げる。ここで向かいに座るユウジがロマンチックな事を言ってくれたら
「腹減ったな」
ですよねー。ユウジって変な所が抜けてる気がする。
「え、こづえ何か拗ねてへん?」
「…拗ねてないよ」
「拗ねとるやんけ」
「拗ねてないっ」
ここのレストランがすごく上品な雰囲気だったから、ユウジも私も小声気味に喋る。ムードぶち壊しだ。期待した私が馬鹿だったかも。妙な視線を交わしているうちにいかにも上品そうな料理が運ばれてきた。おいしそうだ。
「…じゃ、食べようか」
「う、うまそうやな」
飛行機の予定や明日のスケジュールなんかをぽつぽつ喋りながら食事を終えた。
「あっ、う、うまかったな」
「ん?うん」
今のユウジには挙動不審、という言葉が似合うと思う。
「…こづえ」
「ん?」
ユウジが私の目の前に手の平を差し出した。何だろう。お腹痛いのかな。胃薬でも欲しいのだろうか。私がぽかんとしているとユウジはその手をぎゅっと握り、一度ぐるりと捻った。次にユウジがぱっと手の平を開いた時、その手の上には銀色の糸が。
「…え」
「お前が可愛い言いよったネックレス」
「か、買ってくれてたの…?」
「ほんまはもっと料理ん中仕込むとか凝った事したかってんけど、お前そのまま食ってまいそうやったし、手品のんがやりやすかったから…なんか下手くそですまん」
「ユウジ…」
「旅行来たら絶対何かプレゼントしたろと思とってん。ありがたく思えや」
「…ありがとう!」
照れたユウジの顔が可愛くて少し笑った。ユウジの手からネックレスを受け取る。きらきらと光るシルバーがキャンドルの光を反射していっそう綺麗だ。
「…着けへんのか?」
「じゃあ、後でユウジに着けてもらおうかな」
「え」
「着けてね?」
「て、手のかかるやっちゃな…」
このあとユウジが真っ赤になりながら私の首にキスをしたのはまた別の話。
100503