「あら、お洒落〜!流石は売れっ子デザイナーのお家!」
「良いでしょ」
アタシは目をきらきらとさせてこづえとユウくんの家を眺めた。彼女達は結婚するにあたって、付き合っていた頃からこつこつ貯めていたお金で新居を建てる事にしたのだ。土地がこづえの祖父からの譲りものなだけに家そのものにお金をかけて、ユウくんが色々とデザインしたらしい。淡い色を基調にしたインテリアは洗練されている。
こづえは真新しいコーヒーカップにカプチーノを注ぎ、クッキーと一緒にアタシに出してくれた。
「あの額縁可愛いわね!…あら」
「ああ、それ」
「…まだ持っとったんや」
カウンターに飾られていたのは中学生のアタシとユウくん、こづえが写った一枚の写真。アタシは懐かしくなって、目を細めてカップをソーサーに置き、写真を眺めていた。
「せっかく新婚なんやから、二人だけの写真でも貼ればええんに」
「ユウジも私もあれが良かったの」
「さよか」
その言葉には厭味も何も無い、純粋な気持ちが込められていた。ほんまにこの子は。ユウくんと二人で幸せになればええんに。けど、嬉しい。
静かにそんな気持ちに浸っていたら、その場の空気をがらりと変えるようにユウくんが帰ってきた。
「あ!小春来とったんや!」
「おぅ一氏」
「え、いきなり男前」
「あぁ〜小春!今日早よ上がって良かったわ〜!せやけど、大学は?」
「サボった。けどアタシにかかれば卒業なんかあっという間やで」
「はぁぁあん小春男前ぇえ!」
「オラァ一氏触んなや!」
「ふふ」
「ほなアタシそろそろ帰るわ」
「え、なんでやねん。飯食うて帰りいや」
「そうそう。食べて行ってよ」
「ええわええわ。ごちそうさん」
意味がわからない、というような顔をする二人を背にアタシは玄関へ向かう。カプチーノとクッキー、それに幸せをくれたから「ごちそうさま」。
お幸せにな。
100427