「…はっ」
「ユウ君は子供嫌いだもんね」
「…」
「ごめんね」
突然こいつが別れるとか言い出したから焦って問い詰めたら子供が出来たかららしい。俺が子供嫌いなんも知っとったからかこいつは堕ろす気満々で、俺はどうしようもなく腹が立ってこいつに初めて手を上げた。
別れるんは許さへん。堕ろすんはもっと許さへん。
「ご…めんなさ」
「別れへん」
「だって」
「絶対に別れたらへん」
「こっ、子供できた、し」
「中絶とかお前にさせたないねん!」
前に俺がまだ中坊の時に保健の授業で習った。それをしたら誰より女が傷付くっちゅー事も。俺らの将来を考えた結果かもしれんけど、中絶なんかぜったいにさせたらアカンのや。一回出来てもたらそれはもう命なんや。無責任なセックスでこいつ孕ませたんは俺やから俺がこいつを、こいつらを養わなあかん。それは責任感とか罪悪感とかやなくて、普通にこいつとこいつの股から生まれてくる子供を愛しいと思ったからや。子供が嫌いとか、責任取りたないとか、そんな次元の話とちゃうねん。
「お前は俺の子供、産みたないんか」
「…たい、産みたいよ…」
「ほな産めばええやんか。俺もお前なら俺の子供産んで欲しいねん」
「ユウく」
「俺なんかデザイナーとしてはまだまだひよっこやし、白石みたいにええ事も言えへん。せやけどお前の事その腹ん中におる奴も含めて愛しとる。幸せに、するから」
せやから俺と結婚して欲しい。
(こ、こう抱けばええんか)
(ユウくん顔こわい)
(しゃあないやろ初めてなんやから)
(あ)
(あ)
(やっぱりパパだって分かってるのかな)
(そうなんやろか)
(だって、嬉しそう)
(顔皺くちゃで表情も分からへんけどな)
(どう?我が子の感触は)
(…ええ感じやん)
100313