「新婚旅行どこがええん」

「へ」



ある朝ユウジは旅行代理店から取ってきたらしいいつくかのパンフを広げ、そう私に尋ねてきた。そういえばユウジの仕事の都合でまだ新婚旅行行ってないんだったっけ。結婚式の翌日ユウジがひいひい言いながら服の型紙を作っていたのは良い思い出だ。



「…ハワイとか?」

「近!」

「沖縄」

「なんでもっと近付いとるねん」

「どこならいいのよ」

「んー、イギリスとか?」

「なんで?」

「そこに俺の憧れのブランドの本店があるねん。参考にっちゅーか視察してみたいねんよ」

「ふーん」



ユウジはイギリスのパンフを片手に目をきらきらとさせて語っている。そんなに行きたいのかなこの子は。



「んー、良いよ。そこでも」

「ほんま!」

「うん」



よっしゃあ!と喜ぶユウジに私も嬉しくなった。正直こんなユウジは可愛いと思う。小春ちゃんから見たユウジもこんな感じだったのかな、と思うと昔の二人にちょっと妬いた。



「あ、あとな、俺こづえに…あ!」

「え?」

「な、なんでもないわ」

「…なによ」

「なんでもないわ!」



この反応は何か隠してる。必死にはぐらかすユウジをじっと見つめるとユウジは俯き、ようやく一言だけ呟いた。



「行ってからのお楽しみや」





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