「命名・大河に決定しましたー!」
澪緒がそう言いながら息子の名前が書かれた掛け軸をばっと開いた瞬間、おおーと歓声が上がった。
「相変わらず弦一郎の字は美しいな」
「大河か…良い名前だ。澪緒が決めたのかな?」
「弦一郎の意見も取り入れながらね」
立海のいつものメンバーを家に招き、命名のパーティをした。それにしてもこいつら、はしゃぎおって。まぁ悪い気はせんがな。
「おーい大河ちゃん、赤也お兄さんだぜ〜」
「"ちゃん"は止めろ"ちゃん"は」
「あ、男なんスよね。じゃあ"君"で」
「うむ」
「細かいな…」
ベビーベッドにたかる赤也や丸井、ジャッカル、幸村に大河を任せ、仁王や柳生、柳と談笑する澪緒の元へ。澪緒は産後めっきり痩せてしまったが、以前のように少しずつではあるが元気を取り戻しつつあった。
「でね、弦一郎たら…」
「俺の話か?」
「おう、新米親父。まあ座りんさい」
「大河が産まれる時に弦一郎がすごく優しかった、っていう話」
「所謂惚気に付き合わされているんですよ」
「へへ…」
「澪緒…」
授乳のためアルコールの呑めない澪緒に合わせ、俺も茶を口に運ぶ。その間も澪緒はにこにこと俺のこっ恥ずかしい話をしていた。
用意していた酒の肴が半分ほどになった頃、リビングに大河の泣き声が響いた。
「赤也!」
「おっ、俺何もしてねぇっス」
「腹減ったんじゃねぇの?」
「おむつなら俺が替えてあげようか」
流石は母親。澪緒はすぐに大河の元へ駆け寄ると抱き上げ状況を判断したらしい。
「おっぱいの時間かな。ちょっとあげてくるから、みんな適当にやってて」
「いってらっしゃい」
「…本当に一気に母親らしくなったな」
「すごいよね母性本能って」
「少し前までは澪緒が子供みたいやったんじゃが」
「先輩、大河君に構ってばっかでちょっと妬けるっすね」
「子供かよ」
「そう言えば、真田君の方が妬いているのでは?」
「おっ、俺が息子に妬くなど…」
「たまには甘えてみたら?」
「気張ってばっかじゃ疲れるぜ」
いつの間にこいつらはこんなにも世話焼きになったのだろうか。
100315