「はぁ…幸せ」



左手薬指の重みにうっとりとしながら呟くと、隣で寝転んでいた弦一郎がくしゃみをした。
風邪?と茶化すように尋ねると真っ赤な顔で必死に、違うわ!と言うものだから、愛しさは増幅した。

愛しい私の旦那様。




「もう起きてたの?」

「今日は少し早く出る」

「お弁当は?」

「頼む」

「了解」



もそっと布団から出ると肌寒い朝の空気が私を包んだ。
寝室の畳からリビングのフローリングへ、ひやりとする感覚に身震いしながらキッチンへ向かう。弦一郎のいつものお弁当箱を用意し、卵焼きを焼く。
弦一郎の好きな焼肉をこれでもかという程詰め込み、その他諸々野菜も入れつつ完成。
ちなみにご飯には海苔でハートを書いてやった。

朝ごはんを用意して待っていると、着替え終わった弦一郎がダイニングに出て来た。あ、襟立ってる。
お茶碗にご飯を盛り弦一郎に出すついでに襟を直してあげた。



「今日は早く帰る」

「え、なら一緒に買物行かない?今日の晩御飯は鍋にしようと思うんだけど、白菜とか重いし」

「ああ、構わんぞ。練習が終わったら電話する」



弦一郎はプロのテニスプレイヤーとして様々な大会で活躍している。最近はオリンピックがどうとかいう話も出ていてつくづくすごい人だと思う。私も妻として鼻が高い。

朝ごはんを平らげた弦一郎にお弁当を渡し、いつもの帽子を被せると、見送りのために玄関まで付いて行く。
靴を履き終わった弦一郎の胸に手を当てて、私は爪先立ちになった。



「…何だ」

「行ってらっしゃいのキス」

「澪緒、朝から何事だ!」

「夜なら良いの?弦一郎のえっ」

「言うな!」



声裏返ったよ弦一郎。
こんなベタなネタに一々恥ずかしがりながらも結局はキスをくれる弦一郎が大好きで仕方が無いのだけれど。
こうして朝に彼を送り出す度に"結婚した"という実感が沸いてきて、また顔がにやけた。



「いってらっしゃい」

「…いってくる」




今日も幸せな一日になりそうだ。






100122



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