最近大河の夜泣きがひどくなってきた気がする。少し前までは弦一郎と大河と私三人で寝ていたにも関わらず、今では弦一郎は別室で寝るようになっていた。スポーツ選手として睡眠を採れないというのは致命的だ。
「わぁああ、ああああん!」
「…はいはい、ねんねねんね」
「びあああああ!」
「…分かったから…っ」
一度泣き出すともう手がつけられない。ひとしきり泣いて疲れた頃にミルクを飲みながら眠るのだ。
「…」
「わぁあ、わああ!」
「…澪緒!」
「弦一郎…ごめん、すぐ泣き止ませるから」
うるさかっただろうか隣の部屋から弦一郎が寝室を覗きに来た。私は弦一郎に迷惑をかけてはいけないと思い大河をあやす。それでもなかなか簡単に泣き止んではくれない。
「もう…どうして泣き止んでくれないの…?」
ここ数週間まともに眠れない日々が続いている。無性にイライラしてしまって、弦一郎や大河に当たらないようにするので精一杯だ。泣きつづける大河を見ていて私も泣きたくなってしまった。それは我慢出来なくて対には零れてしまう。つらい。
「澪緒…」
「大河…どうして…」
「無理をするな」
そう言って弦一郎は私から大河を取り上げてあやした。大河が泣き止む頃にはすっかり空は白んできていて、弦一郎は朝練を省くと言った。
私、もっと頑張らなきゃ。妻として母親として、弦一郎に迷惑はかけられない。
100319