「ぬぁぁあああ!」



穏やかな午後に突然響いた弦一郎の悲鳴。何事かと思い、干す最中のバスタオルも放り出して寝室に行くとそこには大河を抱いてオロオロする弦一郎が居た。



「っ、澪緒…」

「大河に何かあったの!?」

「泣いていたので抱き上げてあやしていたら…」

「え!?」



見ると大河を抱く弦一郎の腕が白い液体で濡れていた。



「俺の抱き方に問題があったのだろうか…」

「…ああ、大丈夫だよ弦一郎。ミルク吐いただけだから」

「そ、それは問題なのではないか!?大事には到らんだろうな?」

「大丈夫大丈夫。男の子にはよくある事だよ。特に問題は無し」

「そ、そうか…」



私が弦一郎から大河を受け取り、そう言うと弦一郎はほっと胸を撫で下ろした。弦一郎が取り乱すなんてよっぽどの事だからそんなに心配したんだと思うと嬉しくなった。



「…ふふ」

「何が可笑しい」

「弦一郎って良いお父さんだね」

「…そうか」



大河の吐き出したミルクで汚れた袖を拭きながら弦一郎が照れたように顔を逸らす。



「…俺に言わせてみれば」

「え?」

「お前のがずっと立派な母親だ」

「私だってまだまだ新米だよ。さっきのだってお母さんの受け売りだし…」

「それでも、お前はすごい」




弦一郎にそう言われただけで、私はこれからも頑張っていけるような気がする。





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