「…俺は、小春が好きや」

「…本気で言うとん?それ」

「本気や。朔がおらんで寂しいんはほんまやけど、好きなんはお前や、愛しとるんや」

「一氏」



普段の女々しい印象とは全く違う、小春の俺を見る目が変わった。静かな図書室の空気が小春の威圧感に拍車を掛け、正直俺は怯んだ。



「嘘も大概にせぇ一氏」

「嘘ちゃう!」

「嘘ついてへん人間が、そないな顔出来る訳あらへんやろ」



ばっ、と目の前に小春の手鏡が翳された。そこに映る薄暗い図書室の中に浮かび上がるのは、紛れも無く俺の顔だ。そのはずだ。だが俺は見違えた。
俺の顔はひどく疲れた顔をしていた。



「嘘吐きまくっとるからそないになんねん」

「これは、最近寝不足やから」

「他人にも!自分にも嘘ついて!…その内お前はあかんようになる」



お前だけやない、朔もや。


朔の名前を出された途端俺は何も返せなくなった。黙り込む俺を一瞥し、小春は席を立ち、図書室を出て行った。
置いていかれた小春の参考書が、小春の優しさを表しているようだった。




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