新郎の控室は新婦の控室のすぐ近くにある。綺麗に装飾されたドアを押しながら私は胸を弾ませた。室内ではユウジが鏡に向かってリボンを直している最中だった。



「…ユウジー」

「お…よう似合とるやん」



あれからユウジは私を褒める事が多くなった。なぜかと聞いたら素直になってお前を大切にしたいという答えが返ってきて、私は嬉しくなった。



「俺のデザインに狂いはあらへんかったな」

「みんな褒めてくれたで」



くるりとユウジに見せるように回ると嬉しそうに笑うユウジが居た。



「どしたん?」

「いや、夢叶ったなぁて」

「…せやね!」

「朔」

「ん?」

「好きやで」

「…うん」



それが私が一氏朔になる前の最後のキスだった。




「なんや見とるこっちが恥ずかしいっすわ」

「財前お前声でかいねん!」

「ケンヤがいちばんうっさいやん!」

「金太郎はん、静かに」

「もぉ、空気ぶち壊しやないの」

「オサムちゃん写真撮れた?」

「バッチリやで」



キスを止めて騒がしいドアの方を見てみると、皆がドアの隙間から顔を縦に並べて私達を見ていた。わなわなと震えるユウジは顔を真っ赤にしている。


「お…お前ら死なすど!」

「照れんでもええやん、後で教会でもするんやし」

「うう…」

「よーしお前ら、今度は全員で撮るでー!新郎新婦!真ん中並び〜!」

「おん!」

「はーい!」





これから先もずっと、私の隣には
私の好きな人。





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