「こいつ泣かすなや」
「…最初に朔泣かせたんはお前やろ」
「こいつ泣かせるんも慰めるんも、全部俺の役目や」
乱れた制服を隠すようにユウジの学ランが私の肩に被せられた。蔵は明らかに不服そうで、私達をじっと見ている。
「…朔おいで」
「蔵、私…ユウジが好きやねん」
「朔…」
「俺も朔が好きや。朔は大事にする。白石、別れたってくれ」
険しかった蔵の顔がゆっくりと解かれていく。切なげな微笑を浮かべて蔵はぽつりと呟いた。
「やっと、手に入れた思ったんに…敵わんわ、ほんま」
「蔵」
「ん?」
「私なんかを好きになってくれてありがとう」
本当にありがとう。蔵。
暖かい手をくれて。
100320