この片想い、神様へ






案内されたのはカウンターから幾分近い部屋。ひなたちゃん一人だから、とお兄ちゃんが手配してくれた。心配性なお兄ちゃんらしくカウンターから目の届く位置にその部屋はある。



「ひなたちゃん、もうすぐ上がれるったい、待っといてね」



たまに部屋を覗きに来ては色々と世話を焼いてくれるお兄ちゃん。私はドリンクバーのメロンソーダを啜りながら歌ったりお兄ちゃんの仕事ぶりを部屋のドア越しに眺めていた。
一曲歌い終わり、ふとカウンターの方を見るとお兄ちゃんはレジをしていた。レジ打ち苦手そうだけど大丈夫かな、と見ていたけどそれは大丈夫そうで、慣れた手つきでレジを打っていた。が、問題はそこからだった。お客さんの女の人何人かがお兄ちゃんに何事か話掛けている。お兄ちゃんは愛想笑いを浮かべてかわしているらしかった。
防音のお陰で会話は聞こえなかったがお兄ちゃんはどうやら逆ナンされているらしい。お兄ちゃんにそんな事をする女の人が嫌だったけど、仕事とはいえそんな女の人ににこにことするお兄ちゃんもなんだか嫌で心がもやもやした。





「ひなたちゃん、もうすぐ終わるとよ。着替えて来ると…どげんしたと、怖い顔ばして」

「お兄ちゃん、さっき綺麗な人に囲まれてたね」

「ああ、あれ。ひなたちゃん、ヤキモチしとっと?」

「…してないよ」

「むぞらしかね。俺にはこげに近くにひなたちゃんが居るけん、あんなんに興味無かとよ」



お兄ちゃんは部屋に入ってドアを閉めると子供を扱うように私を撫でた。そして私の前髪をかきあげ、その額に優しくキスを落とした。



「お兄ちゃ…!」

「さて、着替えてくっかねぇ」



お兄ちゃんは私の事を一体どう思っているのだろうか。妹のようなものなのか、それとも異性として、そこまで考えて私は考えるのを止めた。まだ答えを出してはいけない。そんな気がした。






100321









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