心が蒸れる
「おはようさん。朝飯出来とるよ」
「お兄…ちゃん」
「早うしなっせ。遅刻するたい」
「ん…」
今日から大学へ行かなければならない。お兄ちゃんも今日からバイトを始めると言っていた。お兄ちゃんを泊めてから数日、家族のような生活が滞りなく続いている。朝に弱い私をいつも起こしてくれるのがお兄ちゃんだ。
「ひなたちゃんの寝顔はむぞらしかね」
「お兄ちゃん…オッサンみたい」
「俺はまだ22ばい」
ひどか、なんて言うお兄ちゃんからご飯を盛られたお茶碗を受け取る。こうしているとミユキちゃんは居ないもののずっと前のあの時を思い出すようだった。お兄ちゃんはミユキちゃんくらいとまではいかないが私の事を可愛がってくれた。
朝ごはんを終え、さっさと着替える。私服で学校へ行くのは少し妙な感覚がした。玄関で靴を履いていたらお兄ちゃんに頭を撫でられた。
「帰る頃には電話入れなっせ」
「うん」
「こうしとると、ほんまに妹のようたいね」
「ミユキちゃん居るじゃん」
ミユキちゃんの名前を出した途端お兄ちゃんの顔に始めて影が差した。ミユキちゃんと何かあったのか尋ねようと思ったが、早く学校に行けと押し出されるように家から出されてしまった。
一体、彼と彼ら家族に何があったのだろうか。
100320