もういっそ間違ったまま生きちゃいなよ
「お兄ちゃんを…泊める?」
「頼むばい」
「え…」
あの後少し話して、そして急に頼み事をされた。その内容にはつくづく驚かされたのだが、なんと彼は私のマンションに泊まりたいらしい。しかも一泊やそこらではないと言うのだ。
いくら初恋の人でもそんな頼み事、冗談じゃない。私達はもう子供ではないし、れっきとした男と女だ。そんな同棲紛いの事を出来る筈無い。
「どうして…」
「んー、理由ば今は話せん。ばってんいつか必ず話すたい」
「…」
どうやら彼は本気らしい。その真剣な眼差しに結局私は折れてしまった。私は暫く迷った挙げ句、彼を家に連れて帰った。幸い部屋は一つ空けようと思えば空けられる。
「一人暮らしにしては広かね」
「お兄ちゃんはこの部屋使って」
「俺なんぞに部屋…別によかよ?廊下で寝るばい」
「いいの、どうせ使わない部屋だから」
お兄ちゃんは少ない荷物を床に下ろし感嘆の息を吐いた。私は来客用の布団をお兄ちゃんの部屋に運び込むと夕食の準備を始める。少ししてからお兄ちゃんもキッチンに準備の手伝いに来てくれた。
「ひなたちゃん、生活費は仕送りかね」
「うん。お母さんが送ってくれるの」
「なら、俺の分は俺が稼ぐしかなかとね。バイトばするばい」
「大丈夫だよ、仕送りは多めに来るし」
「いや、ただの居候じゃ悪か」
なんだか本当に同棲のようになってしまった。
100320