二度目の偶然があたしたちの運命で






高校を卒業し私は今年の春から大阪の大学に行く事になった。大阪と言われて、もう十年は前のあの初恋を思い出したが彼の顔はおろか友人の顔も思い出す事は出来なかった。

一人暮らしのために買ったマンションの一室の掃除を終え、私は外出しようと思う。今日から住み始めたため冷蔵庫がからっぽなのは当たり前だがそれは私をひどく寂しくさせた。母が置いていってくれた煮物があったが、あともう一品おかずが欲しいと思い散歩のついでに最寄りのスーパーを探す。外は日が傾きかけていてオレンジ色に染まっていた。地元とあまり変わらない大阪の住宅街の中をのんびりと歩きながら初恋の人の事を思い出そうとしていた。



「…ちとせ、千歳…ミユキちゃんは分かるんだけどな…せ…?せん何たらだっけ…」



名前すら覚えていないのは悲しいが当時は彼をお兄ちゃんとしか呼んでいなかったのだ、無理は無い。お惣菜やいくつかの冷凍食品を買いながら私は記憶の糸を辿っていた。



「もしかして…ひなたちゃんやなかと?」

「…え?」



買い物も終え、辺りが少しばかり薄暗くなった頃、私はとても背の高い男の人に声を掛けられた。こわい。早く帰らないと。無視して歩きだそうとしたら目の前を巨体で塞がれて通るに通れなかった。



「たいが久しぶりたい。ばってん、あんま変わっちょらんね」



私は最初声を掛けられた時から少し疑問に思う事があった。どうしてこの人は私の名前を、そして地元の方言を知っているのだろうと。よくよくその人を見てみると見覚えがあった。黒いくせ毛、鋭いながらも優しい目、さりげなく耳を飾るシルバーピアス。


「もしかして、ミユキちゃんの…お兄ちゃん」

「お、今頃気付いたかね」



初恋の人は思い出すまでもなく、私の目の前に現れた。




100320









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