誤魔化し続けたその先





あれは、千歳が高校三年ん時やった。


千歳が親父さんと喧嘩したんやって言うんや。何でか聞いたら、実家に戻るか戻らんかでもめたらしい。

知っとるかな…?あいつの親父さん、有名な陶芸家やねん。一つの作品に何十万もつくくらい。
千歳はそれを九州で継ぐはずやったねん。

けど、千歳はテニスの為に中学ん時大阪に来て以来、ずっと思っとったらしい。

《決められた道を歩くのは嫌だ》

なんや何かの歌の歌詞みたいやけど、千歳はほんまにそう思っとった。
せやから中学卒業したら仕事継げ言う親父さんに反抗して、高校も四天宝寺高校行ったし、大学も大阪んとこ入ろうとしとった。
千歳の親父さんがそこでキレてな、大学の金は鐚一文払わん、てなったねん。

勘当されるか、親父さんの言われた通り九州に帰って継ぐか。千歳はすぐ決めたで。親父の言う通りになんかせえへん、って。
半分意地みたいになってな、後戻り出来んかった。
俺も親が医者で、将来は医者になれて何回も言われて嫌になった時期あるから千歳の気持ち分かるねん。…俺は結局言われるまま医者になったけど。

それで、千歳は高卒で働き始めた。
千歳って、会社員って感じちゃうやん?せやからせっかく就職した会社もすぐ辞めてもて、アルバイトで何とか生活しとったんよ。
けど上手いこと金やりくりできんくて、そのうち住む家も無くした。最初は俺ん家とか他の知り合い…白石とか小石川の家に泊まったりしよったんやけど、迷惑かけたらあかん思ったんか知らんけど、急に来んくなった。
どないしたんか聞いたら、街うろついとる時に知らん姉ちゃんに声掛けられたから、その姉ちゃんのとこで生活しとる言うんや。

ちょお、ひなたちゃん…そんな顔されると話し難いけど、話さなあかん事やから話すで。
千歳はその姉ちゃんや姉ちゃんの友達とセックスして、金を稼いだ。あいつ、モテるから、金出してでも抱いてくれ言う女はぎょーさんおったからな。
ひなたちゃんに会うまで、女の家とかホテルとか転々としとったんや。


ひなたちゃんにこの話せんかったんは、今まで不特定多数の女抱いた事と、家族と縁切れとる事知られたくなかったみたいやで。
ひなたちゃんの見たミユキちゃんの電話番号は、千歳を心配したミユキちゃんが親に秘密でくれたメモやねん。いつでも帰って来てや、って意味やと思う。
千歳にとったらそれだけが肉親と自分を繋ぐ紙やったから、手放さんかったみたいやな。


…俺、気付いとった。千歳、陶芸好きやねん。テニスもそうやけど、あいつ、好きな事しとったら目で分かるんよ。高校の何かの授業で陶芸した時、めっちゃ楽しそうな目しとったんや。

高三の時の選択、後悔してへんか聞いてもあいつは《してない》の一点張りや。けど、絶対あいつ後悔しとる。俺らがまだまだ青いときに張ったしょーもない意地で好きな事を捨てた事、人生を棒に振った事。あいつは後悔しとる。




長なってしもたな。
所々説明下手くそやったかもしれんけど、これが千歳の真実や。



100718









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