だから嗚咽





玄関の扉が閉まるのが、いつもより何倍も遅く感じた。



「…ばか」



あの時見せたお兄ちゃんの焦りと、怒りと、少しの戸惑い。それら全てが私にとって初めてのお兄ちゃんで、私は恐怖に近いものを覚えた。
「出てって」なんて、うそばっかり。お兄ちゃんが居ないと私、もう何にも出来ないのに。



お兄ちゃんの温もりが未だ残るソファに倒れ、今度は声を殺して泣いた。






お兄ちゃん、これからどうするのかな。
知り合いの所に行くのか、私の知らない女の人の家にでも行くのかな。その女の人とも仲良くなって、私を抱いたあの逞しい腕で、私ではないひとを抱くのだろうか。私の事なんて忘れて、また新しい生活を始めるのだろうか。




100603









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