あなたを知ってしまった





まどろみから覚めると既に日は昇っていて、私は身体のだるさにため息をついた。今日は一日家でごろごろしていよう。ふと隣を見ると裸のままのお兄ちゃんが眠っていて、途端恥ずかしさを感じた。昨日、お兄ちゃんと一線を越えてしまったんだっけ。






「ひなた…起きとったんね」

「う、うん。あ、お兄ちゃんコーヒー飲、む?」

「はは、ひなた挙動不審たい」

「だって…」

「恥ずかしかね?」

「…」

「昨日のひなた、むぞらしかったけん」

「ばか…!」

「まるで猫のごたる。にゃーにゃー言いよった」

「お兄ちゃんのばかぁあ」



恥ずかしがる私をよそにお兄ちゃんはけろりとしていて、私は余計に恥ずかしくなってしまう。コーヒーカップを掴むお兄ちゃんの何気ない指の仕種にすら昨日を思い出してしまった。お兄ちゃんはそれをお見通しなのか私を見てにやにやと笑う。



「ひなた、顔真っ赤ばい」

「も、もう…」

「俺ら、恋人っちゅー事でよかね?」

「う、うん…改めて言われると…」

「ひなたは今まで通りで良か」



お兄ちゃんは私の手にそっと自分の大きな手を重ねてにこりと笑った。温かいその手に私の不安が解かされていくようだった。



「好いとうよ」







100321









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