その詐欺師、刺咬
白い夢を見た気がする。
何の夢かは覚えていない。ただ、目が眩む程眩しい白い夢を見た気がする。
今日は特にマネージャーの仕事が無くて、私は部室で一人部誌を書いていたのだが、突然猛烈な睡魔に襲われ意識を飛ばした。
「こづえ」
「…あ、幸村、部長…」
「こんなところで寝てたら、真田に怒られるよ」
「は、す、みません…」
慌てて立ち上がり、時計を見た。まだ5分しか経っていない。よりによって幸村部長に見られるなんて(真田副部長よりはマシだけど)ついてないなぁ。
「こづえ、ジャージ忘れてるよ」
「あ、大丈夫です。暑いんで」
「そうじゃない」
ちくり、と幸村部長の指先が私の首に当てられた。刺されてる。とだけ言い私の手にジャージを持たせる。
「気になる奴も居るだろうから、隠して」
「は?」
刺されてる?蚊にでも刺されたのだろうか。痒くは無い。
幸村部長は私からすっ、と離れ、自分のロッカーを開けた。タオルを取りに来たらしい。
「仁王、ってとこかな」
「…あっ!」
幸村部長のロッカーの扉の内側に掛けてある鏡に私が映った。私の首に確かにある鬱血跡。仁王先輩の悪戯だ。
100605