俺だけの蝶









丁寧に巻かれた髪はくるくるふわふわで、螺旋を描いて俺の肩に掛かる。ええ匂いもする。



「光」



グロスが盛られた唇がぬるりと動いて俺の名を呼んだ。


会ったばっかりのこいつはそばかすやニキビだらけの顔しとって、瓶底眼鏡架けとって、髪は枝毛だらけで引っ詰め三つ編み。そんなお世辞にも可愛いとは言えへんこづえを俺は好きになった。こづえはそこらの厚化粧の女子よりも女の子らしくて、優しい。俺は自分で面食いやと思っとったんやけど、実際好きになったら顔とか関係なしに可愛えと思えるんやな、と思った。
告白はしたかった。けどこんなチャラい男に好かれてこづえ、迷惑やないんやろかとも思った。

情けない事に俺は告白する勇気が無くて、結局はこづえから告って来た。こづえは最初から振られる気でおったんやと思う。用件だけ言うてさっさと逃げようとした。



「なんで逃げるん」

「…ごめんなさ」

「俺、まだ返事してへん」

「え?」

「俺も…好きやねんけど」



嘘やろ?とか何度も聞き返されたけど、嘘とちゃう、と何度も返した。そしたらこづえはにっこり笑って「嬉しい」。

晴れて俺らは付き合う事になったんやけど、それを気に入らんかったんが他の女子や。こづえに影でめっちゃ嫌がらせしたらしい。俺を好きやからとかなんとか、知らんけどそいつらはブサイク決定。「私、財前君とは一緒に居られない」「あいつらの言う事なんか気にすんなや」。こんなやり取りもあった。

それからこづえは変わった。眼鏡外してコンタクトにしたりとか、カーラー使うて睫毛上げたりとか、肌は手入れしてすべすべやし、髪もつやつやでたまに巻いて来たり。見違えるほど綺麗になった。俺に釣り合うように、て無茶しよった。挙げ句の果てには「光、ピアス開けて」やから焦った。
流石にピアスは開けたらんかったけど、こづえの変身ぶりは止まる事を知らんくて、今ではもう校内でも有名な美少女や。

こづえが告られる、っちゅーんもよう聞く。けど相変わらずこづえの目には俺しかおらへん。俺しか。



「光、好き」



ブス女に面食い男、よう肝に命じとけ。
こいつは俺だけの



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