はらぺこな彼女
据え膳な彼氏。
「すー…すー…」
ごくりと唾を飲む音が響きそうなくらい静かな真夜中。ほんのり明るい部屋に浮かぶ輪郭。私がもぞもぞと布団で動いても反応しない辺りどうやら爆睡しているらしい。ユウジの腕の中でごろりと寝返りを打ち、彼の寝顔を見つめた。
そっとユウジの髪を撫でる。やわらかくてさらさらだ。くんくん。まだ香るシャンプーのにおい。
「…ユウジ」
呼びかけても反応無し。規則正しい寝息だけが返ってきた。その顔を覗き込むとユウジの唇はうっすらと開いていて、その中は真っ暗で見えない。キスしたい。寝てる彼氏に欲情とか、はしたないのは十分承知だし。
寝る前にも沢山愛し合ったけど、足りてないって訳じゃないけど。要するに無防備なユウジが悪い。
「ユウくん…う」
「ん…ふ」
ユウジの唇を舐めて舌でこじ開けて、だらりとしたユウジの舌を舐めた。すると無意識のうちになのかユウジの舌が動き、
「ん、」
「は…あ?…こづえ?」
「ユウジ、起きた?」
「あほ、何やっとんねん」
ちょっと掠れた低い声が、白石的に言うとエクスタシーの片鱗を感じる。不機嫌そうに少しだけ目を開けた。
「ユウジ、したい」
「いやや…俺もう疲れてん」
「若いのにだらしない」
「あほ。もう寝ぇや」
「あう」
布団を掛け直し、ぐいと腕の中に閉じ込められた。別にまだ諦めた訳じゃないんだけど。ねぇユウジってば。そう言おうとして止めた。ユウジは既に深い眠りの中。仕方ないから私もユウジの心音を聞きながら眠る事にした。
100517
二万打リク作品