まずはお友達から
「イグアナてかわええ」
「…」
彼の顔はまるで恋する乙男のようだったけどその恋の相手に私は呆然とした。は?何を言っているんだこの金髪は。イグアナて。爬虫類は人によって好みが分かれるけれど、私はどちらかといえばかわいいと思う。けどそんなに真面目に、しかも頬まで染めて言われたら私は何だか謙也への片想いに切なささえ覚えてしまった。イグアナおそるべし。
「まあ、イグアナはかわええよな」
「やろ?あの目たまらんわ」
「はあ」
「最近俺イグアナ飼い始めたんやけどな、ほんまそいつがかわいいねん。昨日なんか俺の腹の上に乗せたんやけど、それがもうこそばくて…」
謙 也 の 腹 。
私にとって神聖な領域であるそこにイグアナはいとも簡単に足を踏み入れたという事か。くそうイグアナうらやまけしからん。嬉しそうに話す謙也。ああ、爬虫類に嫉妬する日が来るだなんて思ってなかったよ私は。
「…うらやましい」
「やろ?うちに来たら触らしたってもええで!」
「ちゃう」
「は?」
「やから、イグアナと触れ合える謙也がうらやましいんやなくて、謙也と触れ合えるイグアナがうらやましいねん」
言い出したら止まらなくなってしまった。えーい、言ってしまえ。あれ、もしかして私えらい事言ってる?
見ると謙也は固まっていた。あああ何か私めっちゃ恥ずかしいやん。とか何とか思ってたらふいに私の手を謙也が掴んだ。
「あほやな、俺らいつでも触れ合えるやろ」
「謙也…」
「俺お前の事も可愛がっとるで?お前も動物っぽいしな!」
うん、とりあえずペットからの脱出だ。
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