五月晴れ
「あっ、つぅ」
「もう無理じゃ俺は一歩も動かん」
「馬鹿、動かなかったら家帰れないじゃん」
「…プピーナ」
涼しい木陰よさようなら。私達はお家に帰ります。まだ五月に入って間もないくせに今日の気温は最早真夏。仁王がアイス買いに行こうなんて言いださなければ。渋る仁王を道端の木陰から引っ張り出し、私達は蜃気楼で揺らぐアスファルトを歩き出した。
「コンビニ、こげに遠かったかのう」
「しらないよ」
「ん、アイス落ちるナリ」
「あ、っぶな」
アイスは確かに美味しいけど、こんな灼熱地獄に出て来るくらいならクーラー効かせた部屋でごろごろしとけば良かったな。言い出した本人はさっきから弱音ばっかりで、私だって折れそうだっての。
「…モナカ選んだんは失敗じゃった」
「うわ、汚っ」
仁王がぐっとモナカを押した瞬間中からバニラアイスが吹き出る。仁王の指はべとべとだ。ぺろ、と仁王の赤い舌が汚れた指の間をなぞる。
「…えろい」
「は?」
「いや、仁王が舌出して舐めてるってなんか…発禁モノだよね」
「どういう意味じゃ」
と、仁王に気を取られている内に私の指にひやりとする感触。ソーダの水色が綺麗なアイスキャンディが溶けてぼろぼろと零れている。慌てて私はアイスを口に突っ込んだ。
「ん」
「よか光景じゃ…」
「ふ?」
「ベタにえろいのぅ」
ピロリン。独特の電子音。
「なんで動画撮ってんの」
「今夜のおかず」
「もしもし柳生助けて仁王の頭が沸騰してる」
『今日は暑いですから。仕方ないですね』
「仕方ないとか」
100505