飲み込んでしまえ
国光が遠くに行ってしまうのは寂しいこと。でも、もっと寂しいのは、国光の心が遠くに行ってしまうこと。それが寂しくて、そしてとても怖い。
「明日には、行っちゃうんだね」
「ああ」
「…国光」
国光はついに明日から肩の治療のために九州に行く。今日は青学のみんなと、ではなく私と二人、私の部屋で過ごしてくれたのが嬉しい。
今日だけは私が少し頑張って甘えてみたり。最初は戸惑っていた国光も、今は私の頭を撫でたりして、互いにスキンシップの応酬。
「こんな事を言って、笑われるだろうが」
「なに?」
「お前と離れるのが、こわい」
「国光も、そんな事言うんだ」
「…幻滅したか?」
「ううん。もっと好きになった」
こわいとか、さみしいとか、そんな事を言ってしまう口は塞いでしまおう。国光はそう言って私に深いキスをした。
100503