プディング









「うわ、プリンだ」



謙也の部屋、部屋の主と私は適当に話をしながらごろごろと休日を謳歌していた。彼の読んでいるテニス雑誌に彼の従兄弟が載っているとか何とか言って寝転んだままページをめくる彼を上から覗き込んだとき、私はあることに気付く。
そういえば最近はテニスの練習もハードだった。謙也のスニーカーは新しくなっていた。謙也は最近前髪が邪魔だと言っていた。つまりは今彼の髪は所謂プリン状態なのだ。



「こいつが従兄弟の侑、って何触っとんねん」

「プリンだプリンだ」



彼の甘く黄色い髪の根本がすこし黒くなっている。まさしくプリン。美味しそうだ。



「あかん、つむじ弄ったらハゲてまう」

「プリンー」



尚も髪を触り続ける私の手を掴んで謙也が上半身を起こした。なんだろう、水族館のアザラシみたいだ。そんな事を考える私とは裏腹に彼は真っ赤になっていて、そんなにプリンをいじられるのがいやだったのかな。



「どうして脱色してるの?」

「コイツと同じ髪が嫌やったからや」



ぴ、と謙也が指すのは雑誌の中で微笑む甘いマスクの丸眼鏡君。成る程、下には丁寧に「三年生、忍足侑士君」とまで書いてある。あまり謙也と似てない気もしたけど、通った鼻やシャープな輪郭等パーツ毎に見ると中々似ているところもある。



「また脱色しに行かなあかんわ。ほっといたら侑士になってまう」



彼の言う通り彼のつむじから出てきた髪の色と雑誌の侑士君の髪の色はそっくりだった。もし謙也が脱色をしていなかったら、青みかがった黒髪だったのかと思うとなぜか脳内に財前君が出て来た。



「私、謙也の髪好きだよ」



私は謙也の髪が好きだ。明るい髪色は彼を表している。ぴったりだし、かっこいい、し、なんとなく速そうだ。とにかく愛しい。
侑士君のおかげで今の謙也があると思うと、雑誌の彼にお礼を言わずにはいられない。
愛しい謙也の髪にキスをすると、甘い香りがした気がした。










100205





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