君レシピ









「なんや、最近えらい可愛いやん」



私の前で頬杖をつくイケメン、蔵は私の毛先をいじりながらそう呟いた。いくらファミレスとはいえ、端から見ればかなりのバカップルに見えただろう私達。ドリンクバーのホットココアを啜りながら私は「誰が?」と返した。



「お前の事や。前から可愛かったけど最近はもっと可愛なった」

「…蔵かてかっこええやん」

「こづえ、前まではデートや言うても髪なんか巻いて来んかったやん」



くるくると螺旋を描く私の髪を指に絡めて遊びながら蔵が少し拗ねるように言った。



「もしかして、俺より好きな俺出来たんかなって心配やねん」

「あほ。髪巻くんは新しいコテ買ったからで、私が可愛なったんやったらそれは蔵のせいやわ」



そう言うと蔵の目がまるくなって、みるみるうちに顔を赤くした。可愛いなこいつ。



「あー…俺のためなんや?うれし」

「てか今の時期可愛なる女の子なんかいっぱいおるやん」

「知らん。こづえ以外の女なんか見いひんもん。なんで?」

「なんでって、もうすぐバレンタインやんか」

「……………ああ!」



毎年段ボール数個分に到る数のチョコをもらうくせに、すっかり忘れていたらしい。蔵が本当にお年頃の男子なのかが心配になった。



「チョコは勉強の合間に食べるんはええけど、血糖値上がるからなぁ。あんま好きちゃうねん」

「…え」

「どうしたん?」

「新しいコテ買うたり、可愛なろしたりとかって蔵にチョコ食べてもらお思ってやった、て言うたら、笑う?」



恐る恐る私がそう尋ねると蔵は一瞬呆気に取られた後、ぷっと吹き出した。



「笑うに決まっとるやん!俺がこづえのチョコ食べてへんと思っとったん?」

「…いっつも一杯貰いよったやん」

「こづえのチョコはなぁ、俺らが付き合うずっと前からちゃーんと完食しとったで?」

「う、嘘や」

「ほんまや!やから今年もくれ、な?」



あと、可愛いなるんはええけど、あんま可愛いなったら心配やからほどほどにな。と言う蔵にチョコのレシピを考えながら私は頷いた。





100207





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