今日だけは
「侑士、何してんの」
「あー悪いな、今から電話するねん。ちょお黙っといて」
「…」
「もしもし、ケンヤか?誕生日おめでとう。ああそうや、届いたか?お前が欲しがっとったスニーカーや。大阪で扱うとる店無い言いよったからこっちで探したねん。それで合うとったか」
学校が終わってやっと一緒に帰れると思ったのに侑士は携帯を片手に楽しそうに話を始めた。相手は侑士の従兄弟のケンヤ君。大阪に居るんだって。それで今日はそのケンヤ君の誕生日だからって、侑士は前から用意していたプレゼントの話をしている。
「白か赤かで迷ったんやけどケンヤすぐ汚してまうやろ思たから赤にしてん。ははは、やろ?」
「…」
「ほな俺の誕生日は三番返しやな…え?あほ、お前俺の誕生日くらい覚えとけや、10月や」
「…」
「んー、せやな…あ、悪いなケンヤ。こっちの姫さんが拗ねてまうから後でかけ直すわ。おう、またな」
「…ばか」
「何や、ヤキモチなん?」
「侑士のばか」
「キスしたるから機嫌直し」
「ば…」
「…可愛ええな。姫さんにはこうやってすぐ触れるけど、ケンヤには滅多に会えんのや。今日は堪忍したってや」
「…うん」
侑士がこんなに甘やかしてくれるならケンヤ君の誕生日も良いかな、なんて。
100317