その中の一つ
例えば首筋を流れる汗や浮き出た鎖骨。一般的な色気を感じる箇所も勿論大好きだが私は特に耳や、その周りが好きだった。柔らかそうな耳たぶ、それにかかる深い緑を帯びた髪は外側へ跳ね上がり、つんつんとした彼の性格を表している。
彼をじっくりと間近で見る事が出来るのは恐らく私だけなのではないだろうか。彼は私や金色小春を除く他人には側に寄るのを許さない。そしてそれを許された私はキスの際に耳に髪をかきあげるという彼の仕種が好きだ。元の元を辿ればそれがユウジのものなら何でも好きなんだろう。
「ユウジの耳が好き」
「いみわからん」
敢えて対象を限定するのはただの照れ隠しに過ぎない。そうして私が彼の耳たぶに噛み付くのを彼はくすぐったそうに笑って受け止める。
100327