その青い瞳はとてもまっすぐで、これから出逢うすべてのものに対して、いっぱいの期待だけを抱えて。
春のやわらかな陽射しは、彼のサッカーへの憧れを表すかのようにきらきらと開け放たれた部室の入り口からも降り注いでいた。

「松風天馬、雷門中サッカー部、入部希望です!」

彼が言い終えたその瞬間窓ガラスに反射したあたたかい日光が突き刺すように目に入って、思わず顔をすこし背けてしまった。
心なしか視界もにじんだ気がして、ごまかすようにまばたきを繰り返す。

ああ、この子は知らないんだ。
今の中学サッカーの現状を。
魂を注ぐ価値などないと捨ててしまうほどに落ちぶれたサッカーを。
俺のようにはなってほしくない。サッカーを否定しないといけなくなってほしくない。

その希望に溢れた笑顔を裏切るようなことはしたくない。

だからといって入部を断ることもできない俺は、了解の言葉だけをなんとか伝えて、彼の体温が移った入部届の封筒を受け取った。

うれしそうに弾んだ呼吸も、さくら色に染まった頬も、俺を見つめる尊敬と憧れに満ちた眼差しも、すべてが俺の胸を締め付ける要因にしかならなかった。

けれど挨拶くらいはともう一度だけ顔を上げて彼の表情を見て、俺は息をのんだ。
背筋を伸ばしてまっすぐと俺を見据える彼は、先ほどの素人然とした装いがまるで嘘のようだった。
これから何があっても、好きなことを決して否定せずに真正面から向き合い、絶対に希望を信じる。そんな覚悟の伺える佇まいだった。

どうしてかは全くわからない。なんとなくそう見えただけかもしれない。でも、その勘にかけてみたいと思った。

すこし気分が明るくなった俺は、彼と同じように自分も背筋を伸ばしてまっすぐ前に手を差し出す。
彼は一瞬戸惑ったあと、にこりと笑って俺の手を握り返してきた。俺より一回りほど小さな、子どもっぽいやわらかい手だった。






(彼が、新しい風を起こしてくれそうな気がしたんだ)









天馬ちゃんにかすかな希望を見いだした拓人きゅん
キャプテンだし、おそらく人を見る目もあると思うんだ








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