―だめだ、だめだ、だめだ。
このままじゃ、みんなの足を引っ張ってばかりになってしまう。
代表に選ばれたのに、お荷物だなんて。
焦れば焦るほどボールは俺をあざ笑うように、否、俺の足はボールではない空を切る。
どれだけグラウンドの土をすり減らしても、過ぎていくのは焦燥感と時間ばかり。
こめかみを汗が伝う一秒すらも惜しいのに、気持ちと体が反比例する。関節が、筋肉が、骨が、追いついてこない。
無意識に奥歯をぐ、と噛み締めていたらしい。
ため息をつこうと息を吸いこんだら、ほんの少し頬に引き攣ったような痛みが走った。
先程から少しも休まずにボールを蹴り続けてきたせいか、体にどっと疲れが押し寄せてくる。
思い通りにならない自分の体に苛立ちが募って、グラウンドの土に乱暴に腰を下ろした。
「緑川、…大丈夫?」
上から降ってきた声に顔をあげる。
「ヒロト…」
ぱっと人目を引く朱の髪の毛がゆっくりと俺と同じ目線の高さまでしゃがんでくる。
表情を伺うと、深緑の瞳が心配そうに揺らいでいた。
「このままじゃダメなんだ…みんなに迷惑をかけてばかりになってしまう…」
ぽつりとつぶやいた言葉は、ヒロトに言ったというよりは独り言に近い。焦りが滲んでまた苦々しい気分になる。
「緑川が頑張ってることはみんな知ってるよ、もちろん俺も」
ヒロトがゆっくりと言葉を紡ぐ。俺を心から気遣ってくれているのが声から話し方から伝わってくる。その優しい声に目を閉じて耳を澄ました。
「大丈夫、緑川ならやれるよ」
ふわ、と頭にヒロトの手の平が下りてきて、小さな子どもをあやすようにやさしく撫でられる。
その手の平が思っていたよりずいぶん暖かくて、閉じたまぶたの隙間から思わず涙がこぼれた。慌てて手の甲でこする。
鼻がちょっと痛くなって、一度だけすんとすすった。
ヒロトは気付いたかもしれないけれど、何も言わずにもう一度頭を撫でてくれた。
胸につかえていた何かが溶けたような気がして、閉じていたまぶたを開いてまっすぐにヒロトを見る。
「ありがとう、ヒロト」
ヒロトはもう心配そうな表情をしていなかった。
俺をしっかりと見つめ返してくれていた。
「絶対、世界でみんなと一緒にサッカーやろう、緑川」
「ああ、必ず」
そう言って二人で笑って、昔のように指きりをした。
もう俺の心に焦りはなかった。
流星使いのヒーロー
(なんか急にお腹空いてきたね)
(あっ!そういえばもうすぐ夕飯…!)
(今日は緑川の好きなハンバーグだって、楽しみだな)
(ヒロトはのんきだなぁ…)
この二人はあくまでも
友達以上基緑未満です
なんだか+の関係って好き
ちなみに緑川は単体萌え
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