中途半端に明かりが落とされた仄暗い部屋の壁にただ生々しい音だけが不規則に反響する。
浅く呼吸するたびにさらけ出される存外白い喉に思わず噛み付いたら、すこしだけしょっぱかった。

所有のしるしを付けたくてその薄い皮膚を歯で突き破らないように加減しながら、でも簡単に消えないように強く唇を宛てる。
痛みが走ったのか、エスカの表情がちょっとだけ歪んだ。
リップ音とともに唇を離せばくっきりとついた行為の証に思わずほくそ笑む。ああ、気分がいい。

そうだ、まだエスカと繋がったままだった。やわらかく包み込むように熱く締まる内のあまりの心地よさにこのまま時が止まればいいのに、なんて非現実的で馬鹿げたことまで考えてしまう。
背中に回された腕がいっそう強くしがみついてくる。
開いた脚の膝裏をつかんでさらに深く突き上げると、結合部がぬちゅりと不快な音をたてた。
生産性なんて皆無で愚か極まりないことだけど、お互いの渇いた欲を満たすためだけにしていることだとは思いたくない自分も確かにいる。エスカが同じ気持ちかどうかはわからないが、少なくとも今は俺がそう思っているならそれでいい。
欲しいものはどんな手を使っても手に入れてきた自分にしてはずいぶんらしくない感情論だ。

背中にあったエスカの腕が片方離れてまだ俺よりすこし子供っぽい掌がするりと俺の頬をなぞる。その手があたたかくてあまりに優しいものだから鼻の奥がつんとなった。




白満月






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