このバンダナとはどれだけの付き合いになるだろう。何年も前から、この髪の毛をまとめるために頭に巻いてきた。
言ってみれば恒例行事、いや、それどころかむしろこれがないと落ち着かない。以前誰かに半分笑われながら、おしゃぶりみたいだな、と言われて喧嘩になったことを思い出す。
後になって考えれば全くもってその通りなのだが、馬鹿にされたみたいな気がしてついカッとなってしまった。

朝起きたらあくびをして、その次にこのバンダナを頭に巻いて後ろできゅっと結ぶ。
これをすることで気持ちが引き締まる。
あると安心するとかだけじゃなく、気持ちのオンとオフの切り替えもあるから、おしゃぶりよりもずっと大事だ。

いつから巻いているかは覚えていないけど、巻くようになったきっかけは覚えている。



***



いつだって俺の後ろにいて、泣き虫だけどすごくやさしくて、笑う顔は誰よりもかわいい。
ロココはそんなやつだった。

俺が喧嘩をしているとやってきて、自分も叩かれたり痛い目に遭うとわかっているのに喧嘩をしないでと必死で止めてくる。
そのうち俺も、喧嘩したってきっとロココが止めにきてくれると心のどこかで思うようになっていた。

そんなある日。
ロココをからかっていた奴らとまた喧嘩をしたけれど、ロココは止めに来なかった。
喧嘩には勝ったけどなんだかすっきりしなくて、胸の辺りがもやもやしていらいらした。
なんで止めにこないんだよ、と、ロココに見当ちがいのもやもやを募らせながら帰り道を歩いていたら、村のほうからロココが走ってきた。
いらいらしていた俺は、ロココに思わず怒鳴る。

「なんで来なかったんだよ!」

ロココはびく、と肩を震わせたけど、大きな黒い目でまっすぐに俺を見つめるとこう言った。

「ごめんね、ウィンディ…でもボク、今日はどうしても探し物があって…」

俺が首を傾げていると、ロココはズボンのポケットから折りたたまれたハンカチのようなものを出す。深い緑色のそれはずいぶん大人っぽい印象で、どうやらロココのものではないようだ。

「これ、母さんに頼んでもう使わないやつをもらってきたの、ウィンディにあげる」
「え…?」

思わずぽかんとしてしまう。
これをどう使えというんだろう。
目をぱちくりさせていると、ロココが近づいてきて俺の髪をさわる。

「ほら、ウィンディの髪の毛…やわらかくて綺麗なのにいっつもぱさぱさしてるから、これを頭に巻いてまとめたらいいかなあって」

ロココは先程出した布を広げて、器用に俺の頭に巻いていく。
ばさばさして邪魔でしかなかった髪の毛が綺麗にまとまって、なんだか軽くなった気がした。

「うん、似合うよ!」

ロココがにぱ、と笑ったのを見て、なんだかさっきのもやもやはどこかへ行ってしまった。

それ以来、俺はこのバンダナをずっと巻いている。
きっと、今も、これからも、この先もずっと、それは変わらないだろう。




赤い糸の代わりに(君と結ばれていたいなんて女々しいけれど)


あいつはこのこと、覚えてるかな?






久しぶりのウィンロコ
ふと思い付いて書いてみた
バンダナへの妄想が楽しくて仕方ないです






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