王牙学園は国の将来を担う優秀な人材を育成するべく、学び舎である校舎を始め図書館等の情報スペース、寮・学内の食堂、実技訓練を行う闘技場等々、全ての施設において最新鋭の設備が整えられている。
しかし、そのような生徒たちには心身ともに強く健やかであってもらわなくてはならないという提督の考えのもと、人工的に野草や芝が植えられた休憩所のようなものも設けられていた。勉学や訓練に疲れた心身は草花で癒すのが効果的だとされており、昼休みには友人と昼食を囲むであるとか、放課後にはここで緑を眺めながら自習をするという生徒達も少なくない。
俺自身は女の子と一緒に昼食を食べにきたり、たまに授業をさぼって昼寝がしたい時に来る程度で、そこまでここを頻繁に利用することはなかった。
そんな俺は今、図書館で借りた植物図鑑を片手に目を皿のようにしてここに植わっている野草を選り分けていた。一昔前まではそこらの道端に生えていたようなシロツメクサ、オオバコ、タンポポにナズナ、カラスノエンドウ、セイタカアワダチソウにオオイヌノフグリ等の野草が、緑色の絨毯のように人工土の地面を埋めつくす。土と草の匂いは新鮮だけれどどこか懐かしい時代の面影を思い起こさせた。

***

俺は学園内でも五本の指に入るほどの有名人であったから、当然どこを歩いても誰かしらが俺のことを知っているわけで、今ももちろん例に漏れずだった。
後ろの方で俺の奇行を見てさわさわと話す声が聞こえるが、俺は今そんな自分の体裁すら気にかけている気持ち的な余裕がなかった。なんとしてでも明日までに探し出さなければ。




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