※続きはない、続かない
※かなり前に書いたので古い
※それでもいい方のみ







いつも一緒にいる
そんなこと言ったって、全てが分かってるわけじゃない。

分かってるつもりでも、全く知らない部分がまだあるかもしれない。

それを思い知らされたのは、あいつと同じアパートの一室に同居させられることになってからだった。


まず第一に、あいつは「片付け」が極端に苦手らしいということだ。




Side→晴矢




「一緒に住んでお互いの理解を深めなさい」


父さんのジェネシス計画に終止符が打たれ、研崎が捕まって間もなくの時だ。

瞳子姉さんにそう言われるまま、あっという間に新しいアパートの手配だの、荷物の移動だのが行われていって、オレとガゼルは、同じアパートの一室に同居させられることになった。


前プロミネンスとダイアモンドダストでお互い争っていた、といっても計画自体がなくなったので今はその必要もない。

むしろ以前のこと(といってもオレ達にとってはたった数日くらいで記憶にはまだまだ新しいが)を引きずって、敵対視しあうのも良くないだろうという父さんと瞳子姉さんの考えにより、まずチームをまとめていたオレとガゼルが仲良くなれば、とのことで今回の同居が決まったらしい。

ガゼル――もとい風介とはカオスとしてチームを組んだとき、協力しあって雷門に立ち向かった。

試合前半はばらばらだったが後半は、雷門の奴らを見てまずオレ達が協力しないといけないことがわかって、お互い手を取り合ったことがある。

だから瞳子姉さんや父さんが思うほど仲が悪い訳じゃないんだけど。

むしろ、同居の話を聞いたとき、少し、嬉しいと感じたくらいだったのだ。(後々、オレが風介に感じる気持ちは、世間一般に恋、と呼ばれるものであると気付くのだけど)

まぁ風介がオレをどう思ってるかは置いといて、オレは別に同居しても構わないくらいに思っていた。
もちろん中学生なのだ、自分のことくらい自分である程度出来るだろうとも。
だけど一緒に住んでみて、自分の考えは死ぬほど甘かったと思い知ることになった。



「だーかーら!何回言ったら分かんだよ!食い終わった自分の食器はシンクに持って来いって言ってんだろ!」

「…うるさいな、だから今持って来てるだろう」

「言われる前にやれって言ってんだよオレは…」


こいつと住むようになってから、こんなやり取りはもう日常茶飯事だ。

他にも、脱いだ服は放りっぱなしで、気付いたオレがまとめて洗濯カゴに入れるとか、使ったものをしまわずに出かけてしまうとか、とにかく世間一般に「片付け」と見なされるものが極度に苦手らしく、注意してもなかなか身につかない。

同居前、姉さんにちらと聞いていたが、まさかここまでとは。

毎日飽きずに(いやこの場合むしろ呆れずに、だろうか)律儀に注意するオレにそろそろ誰か労いの言葉をかけて欲しい。

プロミネンスの奴らが無性に恋しくなって、オレは小さくため息をついた。

それを自分への呆れと受け取ったのか、風介は

「次からは気をつけようと思ってるのに」

と少しふくれて拗ねてしまったようだ。

そういう部分は、可愛いげがあると思ってるけど。


ただ、家事は出来るのだ。
洗濯したり掃除したり、特に休みの日はちょこちょこと動き回る姿を目にすることも多い。

ある時は、ふわふわした薄い色合いの髪を日光にきらきら反射させながら、またある時は、雨は嫌いなのか、ちょっとだけ眉間にしわを寄せながら、どうやら湿気には弱いらしいその髪を、元チームメイトの女子にもらったと思われるかわいらしいゴムでまとめて、家の中を行ったり来たりしている。

料理面は、オレの方が得意だったこともあり、食材確保の仕事と同時にオレが担当しているが、たまに買い物に付いてきて、買うものを一緒に選ぶこともある。


ただ、オレがこいつと毎日一緒に生活して分かったことは面倒なことばかりじゃない。

身長の割に(風介の方がオレよりほんのちょっとだけ背が高い)歩幅は大きくないみたいで、始めは歩くスピードの違いから風介がオレを小走りで追いかけることがあった。
それ以来、オレは風介と歩くときだけほんの少しゆっくり歩くようにしている。

あと、冷めたふりをしてるけれど甘いものが大好きだということも分かった。

風介が買い物に付いてくる時は、たいてい家にあるお菓子が少なくなったときだ。
オレが大体必要な物をカゴに入れ終わった頃、風介が服の裾をほんの少し、引っ張ってくる。

どうやら風介なりのお願いのしかたらしい。
それをつい可愛い、と思ってしまう辺り自分も大概なのか。

風介がお菓子を選ぶときは、決まって甘いものが多い。
チョコレート、クッキー、キャンディ、カップケーキ、エトセトラ、エトセトラ。

そこに、オレが塩気のあるお菓子をいくつか入れる。

オレも甘いものは嫌いじゃないけど、風介ほど食べない。

そういえば、ダイアモンドダストの女子が、よくこいつと一緒に甘いもの食ってるところを見たことがあったっけ。

その時は「付き合いのいいヤツ」とか思ってたけど、まさかこいつ自身がこんなに甘いもの好きなんて夢にも思わなかった。

この間だって、新発売のハートをかたどったグミを見つけたとたん、風介の、翡翠みたいな目が、グミのかわいらしいパッケージを捕らえたのをオレは見逃さなかった。

風介がそれをじっと見ているのを分かってて通り過ぎようとすれば、予想通りに、オレの背中とお菓子を見比べて、そのあと、小走りで慌ててオレに付いてくる。
そんな風介は、無駄にかわいこぶってるそこら辺の女子よりよっぽどかわいいと思う(もちろん、オレのひいき目、も入っているだろうけど)。





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