※夢です
※名前変換はありません


四限目の終わる合図と、昼休みの始まりをあらわすチャイムが鳴り響く。今日はとてもいい天気で、ガラスを通して差してくるあたたかい光に何度もまどろみかけた。
こんな日は、友人からのお昼ごはんへの誘いも断って、ひとりで屋上に行きたい。さっきまでの授業の内容をぜんぶ追い出して、きれいに冴えた頭に一番に浮かんだことはそれだった。

母に小言を言われながら初めて作ったたまご焼き、うまく出来てるといいけれど。そんなことを思いながら、屋上への階段を駆け上がる。スカートがめくれるなんて気にしない。まずだいたい人なんていないんだもの。
教室よりも小さくて粗末なつくりのドアをそろりと開けてみる。思ったとおり蝶番がきしむ大きな音がして、なんだか緊張とわくわくが競り上がってくる。これからいたずらをしようとしている小さな子供もこんな気分なのかなあなんて思うとつい笑ってしまう。ああ、楽しい。
扉をぜんぶ開けきると、向こうの向こうまで雲ひとつどころかなんにもない、真っ青な空が両手いっぱいで頑張っても抱きしめきれないくらいに広がっていた。そこに柔らかくてあたたかい光を届けるお日さま。
お昼寝するには最高の、いやこの天気ならきっと何をしても楽しい気がする、わたしの場合だけど。
これまたフェンス以外何もない屋上に、申し訳程度にぽつんと置かれた木のベンチに失礼してみる。
お日さまのおかげであったかい。
こんなにしあわせな気持ちでお弁当を食べるなんてはじめてかもしれない。
こんなにシンプルでささやかなことにしあわせを感じるわたしは自分が思っていたよりもずいぶん単純なようだ。
頑張って作ってみたたまご焼きは、初めてにしてはなかなかいい出来だった。いや、もうちょっとふわふわしていればよかったかな。次はもっとおいしくできるように頑張ろう。

お弁当を食べ終わったところで、もうひとつの目的を思い出す。屋上で一度はやってみたかったことだ。自分以外に誰もいない状況なんて、屋上にでも来なくちゃとうてい出会えない恥ずかしがり屋さんだから困る。
フェンスの下をのぞいてみると、グラウンドで米つぶみたいな人が動き回って、ごまみたいなボールを蹴ってる。サッカーだな。あ、ポケットみたいなゴールにボールが入った。おもしろい。これだけ遠ければ大丈夫か。
わたしはお日さまのにおいを肺いっぱいに吸い込む。次に吐いたのは息じゃない。大好きで何度聞いても胸がきゅんとする、歌。
甘くてやさしい歌詞を、メロディにのせて歌ってみる。
気持ちを込めて、歌の中の女の子になりきるのが昔から大好きだった。そんなに上手じゃないのも、きれいな声じゃないのも自覚はしているけれど、やっぱり好きだからやめられない。
いつもは耳から届く大好きな歌声を頭に思い浮かべて、今は自分が真似して自分から発してる。いつのまにか身振り手ぶりもついて、踊っているみたいになる。
テープじゃないから擦り切れることはないけれど、何度も何度も飽きるくらい聞いて、息つぎやタイミングまでぜんぶ覚えているくらいに大好きな歌。
最後のアウトロのメロディまで、鼻歌で歌いきる。一曲を歌い終えて、ひといきついてさて余韻に浸ろうかとベンチのほうを振り向いた瞬間。

       



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