※この前のとは繋がってない
※あくまでエス→ミス





この世の粋(すい)、とでも言うのか。
醜いものは一切知らないようなそんな潔癖さと、儚げで脆い少女を思わせる気色を身に纏いながら、おそらくはこの
あくまで、俺たちが身を置く士官学校に於いてのみだろうが、誰もが敵わないと教師すらも手籠められてしまったバダップ・スリードという人物に絶対的な劣等感と、嫉妬の炎を抱いている。
そんな奴の内で渦巻く汚濁をかけらも面に出さず、ときに雨に打たれ静かに佇む桔梗のように、ときにささやかに可憐に咲く金木犀のように。
歩き方に始まり、編みこまれた揺れる髪、鳴らされる軍靴
指先のひと曲げまで、流れるような洗練された動きで毎日を過ごす奴の演技力には、本当にある種の感心のようなものを抱く。
そこには、バダップに敵わない癖に、負け惜しむように無理をしているのだろうと耶喩する気持ちも少なからず含まれているけれど。

毎日飽きもせずにバダップにくっついては、相変わらずの笑顔できゃらきゃらと話しかける。
その光景を見ると決まって何故か胸の辺りがぎしぎしと居住まいが悪くなる。
何であるとも形容し難いものがいびつに膨らんで冷えて、胸の隙間に積み重なる。
でこぼこなそれは、決して心地よくない。
けれど、ミストレが俺を見て話すときに限ってそれに小さく火が燈る。
胸でゆらゆらと明るさを占めていくこの火は、汚いそれをじわりと熔かしていく。
胸を回りきった熱は顔にも移り、かすかに頬をあつくさせる。

ミストレが、ミストレに、ミストレを、ミストレと。
ひとつ蓋を開ければ俺はミストレのことにばかり気をとられて、他のことがまったく疎かになっていた。

ここまで俺の行動を支配するこのいびつな塊とそれを蕩かすあたたかな灯は、並行して顔を出しては均衡を保っていた。

本当に混じり気なく相手に絶対的な慕情を寄せることが恋だとされるなら、この胸を歪ませる乱れた鼓動は、なんと名付けたらよいのだろうか。







それは(恋と呼ぶには拙すぎたのです)










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