好きなやつがいる。

どんなやつかと言うと、女のように甘い匂いもしなければ髪の毛だって整えられるどころか無造作にあちこちを向いている。
訓練で握る機会があったその手は、俺よりすこし骨張っていて、所々に傷もあった。

正直、ひいき目やらなにやらを抜きにしても、俺の方が美人だとはっきり言える。

まぁ元々、見た目を気にするようなやつではないのだけれど。

そんな俺がそいつの何を好きになったのか。

俺のわがままを、文句を言いながらいつも受け止めてくれたりだとか、クラスメートや教師の前みたく優等生の演技をしないでも、そのままの俺と対等に接してくれるだとかたまにからかった時に、すこしだけ赤くなった頬や耳をごまかすみたいにしながら目を反らすところだとか。
そういうところいちいち一つひとつ全てが、俺の心臓を普段よりも多く働かせる。
時にかわいいと感じさせてみたり、うれしいと喜ばせてみたり。

そんな調子だから、胸の中だけでは収まりきらないくらい理由なんてたくさんついてくる。

ここまでしこたま語っておいてなんだが、本当は理屈なんかじゃなかった。

初めて、一目見たとき。
お互いを紹介されたとき。

あの、決意がこもった迷いのない三白眼と、まっすぐに視線がかみ合った瞬間、こいつには心を許していいかもしれない、と。
ほんの直感が俺にそう告げたのだ。

彼、エスカ・バメルとなら、これから先の日々を共にしていける、むしろ出来るのなら彼の隣にずっといたいと。










ひとめ惚れなんてそんなもの










(エスカのかわいさを知ってるのは、俺だけで充分)
(俺の素顔を知ってるのも、エスカだけで充分)









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