彼は俺と話すとき、決まってすこしはにかみながら、首をわずかに傾げて、うっすら頬を染めて。
目線はちらちらと俺の顔色をつねに伺うかのように落ち着かない。

きっと今の今まで仲間にすら見せたことのない、彼自身も初めてする表情だ。

どうして俺は彼をこれだけこまやかにじっくり見ていられるのだろう。
別に俺は彼のように聡いわけでも、鋭い洞察力を持つわけでもない。

そんな俺をここまで冷たく落ち着かせるのは、他の誰でもなく彼自身なのだ。

彼は俺を見ていない。

いつだって夢をみているような、俺たちが生きるこの時間軸にいない人へ思いを馳せるような、そんな瞳をしている。

それこそ時間を遡るまでは、まるでぜんまい仕掛けのごとく、言われた分、ねじを巻かれた分の働きをこなす。
それ以上もそれ以下もない、主人の思い通りに動く人形にも等しく何もかもにおいて完璧な少年兵だったと聞く。

そんな彼は俺のひいじいちゃんと出会って、本当の、ヒトとしての命を吹き込まれたのだろう。
物憂げなため息も、すくめた肩も、傾げた首も。
全部ぜんぶ、ひいじいちゃんが教えたことなのだ。
全部ぜんぶ、ひいじいちゃんに向けるものなのだ。

痛いくらいにそれがわかるのは、俺がそんな彼を好きだからだ。
俺にひいじいちゃんを重ねて一途にみつめる、そんな彼の瞳を好きだからだ。








おもい、片想い、こい








(歴史を変えるという重罪に与えられた罰は、決して叶うことのない恋というものでした)












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