※フィディオがにゃんこ
※ちょっとしたパラレル
イギリスの夜はくらくてさむい。
しかも今はそとで雨がたくさんふっていて、おれがにがてなかみなりまでゴロゴロと音をたてている。
くしゃみも3回出て、おれは体をふるりとふるわせた。
おれがまえまですんでいたイタリアは、夏はすずしくて冬はあんまりさむくなかった(それでもさむさがもともとにがてなおれには、じゅうぶんなくらいだったけど)。
けれど、エドガーがすんでいるここイギリスは、イタリアよりもとてもさむい。
それにイギリスは雨がたくさんふるから、おれが大すきなひなたぼっこもあんまりできなかった。
エドガーのへやは広くて、今はとくにみんなねている時間だからしずかでまっくらで、何かへんな、おばけでも出てきそうなくらいだ。
でもおれはなかまの元からはなれて、たった一人でエドガーについてきたんだ。
だから、かみなりなんかでこわがったり、イタリアよりつめたい空気だからってさむがったりしたら、エドガーによわむしだと思われる。
だから一人でもちゃんとねられるんだってわかってもらうんだ!
そう心にきめて、おれは自分のほそながいしっぽとは正はんたいのふかふかしたもうふをしっかりかぶって、からだもしっぽも丸めて、あったかいのが少しでもそとへにげないようにする。
それでも、はながむずむずしてくしゃみが止まらない。
おれがくしゃみをするたびに
エドガーがくびにつけてくれたすずがちりんと鳴る。
その音が広いエドガーのへやにひびいて、エドガーがおきないかなとしんぱいした。
すると、おれのしんぱいが当たって、エドガーがおきてしまったみたいだ。
エドガーがベッドから下りて
スリッパをはいてこっちにくるぱたりぱたりという音がする。
その音はおれのねどこのまえで止まって、ゆかがぎしりと鳴ったから、きっとエドガーがしゃがんだんだ。
おれはもうふをかぶって丸くなったままねたふりをした。
「…フィディオ、寒いんだろう?おまえがくしゃみをするときは決まって寒がっているときだ」
エドガーがやさしい声でおれにはなしかけてくれる。
「ここはおまえにはつらい環境なのに、無理に連れてきてしまったのは私だ…おまえに無理をさせるような酷い飼い主にはなりたくない」
さっきよりも、ゆっくり、やわらかく、エドガーがおれにはなしかけてくる。
次に、大きなあたたかい手が
おれのあたまをなでてきて、
なんだかなきそうになる。
「何よりおまえに風邪なんか引かせて苦しい思いをさせたくないんだ… …お願いだ、私のベッドに来てくれないか?」
ふだんまわりの人にはぜったいに聞かせないようなやさしい声で、おれにおねがい、と言ってくるエドガー。
大すきなエドガーにおねがいまでされたら、やっぱりいやだなんて言えない。
もうふからかおを出して、目をあける。
おれの目は夜のほうがよく見える、やっぱり思ったとおりエドガーがしんぱいそうにおれを見つめているのがはっきり見えた。
エドガーにしんぱいをかけて
おれはわるい子だ。
おれがエドガーのかおをまっすぐ見れないでいると、ふいにエドガーが手をのばしてきた。
思わずびくっと体をかたくしてしまったけれど、エドガーの手はおれのかおをふわりとつつみこんだ。
そして、エドガーのかおがおれのかおに近づいてきて、おれはいっしゅん目をきゅっとつむる。
すると、おでことまぶたと、ほっぺたに1回ずつ、エドガーのくちびるがやさしくさわって、はなれていった。
「怖がる必要も、強がる必要もない。私はおまえを大事にしたいんだ…」
そう言ってから、エドガーはおれがさわられるのがすきな耳のうしろをやさしくゆびでなでてくれた。
なんだかなみだが出てきて、エドガーのかおがよく見えなくなる。
おれはエドガーにかってについてきたんだよ?
なのにこんなにだいじにされて、たくさんたくさんすきをもらってばっかりで、ぜんぜんエドガーのやくに立ったりとかしてないよ?
「おまえが私のそばでしあわせそうにしてくれれば、それが1番嬉しいんだ」
おれの考えていたことにこたえるみたいにエドガーはそう言って、わらってくれた。
次にエドガーは、おれをもうふごとだっこして、自分のあったかいベッドにつれていってくれた。
エドガーのぜんぶがあったかくて、おれはエドガーにぎゅっとしがみついて、くすんとはなをすすった。
くびのすずがまたちりんと鳴った。
エドガーが、おれがしたよりもつよく、でもやさしく、だきしめかえしてくれた。
もうおれは、つよがらなくてもいいのかな。
甘えてください(そのままの君を、さらけ出して)
甘えられないフィディオちゃんと
甘えてほしいエドガーさん
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